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遠隔からの(リモートでの)FT8運用の望ましい方法
−−如何に弱い局をデコードするか? 如何に多くの局をデコードするか?
−−如何なるツール(リモートデスクトップ、オーディオ伝送)をチョイスするか?
−−如何に快適な操作をするか?
Ver.1.2 '23/01/25 リモートエンコーダーを追加
Ver.1.1 '18/09/23 リグとWSJT-XやTurboHAMLOGの同期化(VSPEを利用)
Ver.1.0 '18/09/01
All rights reserved JA3OOK 中村 利和
上記三つのテーマについて私の現時点での評価や方法を書きます。私のささやかで限られた範囲
での設備や経験なので参考程度にしていただいた方が良いかもしれません。
主に結論を書きます。理由や実験内容については最小限にとどめます。
1.如何に弱い局を、如何に多くの局をデコードするか?
a 使用するPCによって差異があるか?
差異があると言えるほどの差異なし。
b WSJT-Xへのオーディオ入力レベルによる差が出るか?
40dB〜60dBの間では有意な差はないが、30数dB入力と60dB入力で比較すると差がある。
50dB〜55dB程度の入力が良好。
c デコード場所が送信所にあるPCと操作所にあるPCでの差異は?
差異がある。2dB〜4dBほど送信所でデコードした方が良好。
強に弱い局(-20DB程度以下)はデコードできないことが多い。
(送信所PCとリグ間はオーディオケーブルで接続。送信所から操作所へのオーディオ信
号はオーディオ伝送ツールで伝送し比較)
d オーディオ伝送ツールの違いによって差が出るか?
200〜3000Hzでも音域特性の差が大き。フラットに近いもの、高域が下がるもの、低域と
広域を強調しているもの。しかし、特別弱いDX局を狙わない限りどれも合格。
神経質な方はツールの選択に留意すべきかも。
(比較対象は、Brynhildr(ブリュンヒルデ)、ARVP、TeamViewer、Skype)
cとdの結果から
送信所にあるPCでデコードする場合でもリグPC間のオーディオ接続をUSBケーブル接続で
行っている場合、オーディオケーブルで接続している場合に比べて不利かもしれない。
実験してみる価値あり。
上記の実験対象条件
最大3台のノート、1台のデスクトップPC。OSはWin10とWin7が混在。
WSJT-X v1.9.1 r8747。
1台のリグ(TS-590SG)で受信しオーディオ出力を複数の比較対象PCへ入力。つまり、
同じFT8のオーディオ信号で比較。
アンテナ等の環境は普通以上でありノイズが少ないQTH。比較的そのバンドがにぎわって
いる時間帯、-24dB以下から+数dbまでの局が混在。
2.如何なるツール(リモートデスクトップ、オーディオ伝送)をチョイスするか?
前項の結果から、
特別弱い局を狙うなら送信所にあるPCでのデコードが望ましい
↓
必然的にリモートデスクトップ方式を利用することになる
SSB送受信(オーディオ伝送)も行うので、それ用のツール選択も検討が必要になる。
リモートデスクトップツールとオーディオ伝送ツールの特徴をまとめてみた。
(私が経験した範囲。いずれも無償ツール。)
|
Brynhildr |
ARVP |
TeamViewer |
Skype |
リモートデスクトップ機能 画質設定 |
有 可能 5段階 |
無 |
有 不可 |
無 不可 |
オーディオ伝送機能 音質設定 |
下り 可能 5段階 |
上り下り 不可 |
上り下り 不可 |
上り下り 不可 |
補足 当たり前だが、画質や音質やレスポンスが良いほどネットやPCの負荷が高いので、
不必要に高い品質を求めてはいけない。。
Brynhildrの画質設定3〜4、音質設定2で実用的レベル(DirectSoundを選択)。
お金のある方はBrynhildr作者の、上りもあるリモートデスクトップソフトを試される価
値があるかも・・・
当局特有の条件としてUSBカメラでの動画像を操作所で見られることが必須であり、Skypeでな
くてもリモートデスクトップならその要件を満たせられる。
(PW1操作パネル、アンテナ回転方向、セキュリティなどを監視している)
これらを踏まえて、リモートデスクトップツールにBrynhildrを採用し、上りオーディオツール
にはARVPを採用した。
オーディオ伝送ツールの使い分け。
Brynhildr:上りオーディオが必要ない場合
= デジタル通信ソフトを送信所PCで動作させる場合、CW定型文送信で済む
場合、SSB録音送信で済む場合
ARVP :上りオーディオが必要な場合
= CWパドル送信が必要な場合、SSBマイク送信が必要な場合、デジタル
通信ソフトを操作所PCで動作させる場合
参考
・Skypeはデスクトップ機能がないので、デスクトップ機能を持つツールとの同時動作はネッ
トやPCの負荷の問題で使用しにくい。
・TeamViewerは商用利用への嫌疑をかけられると一時的にも使用停止になり、解除申請と審
査に日数がかかるそうなので使用対象外。(友人が難儀しました)毎回、長時間の接続に
なるので心配。
3.如何に快適な操作をするか?
a 遠隔操作ツールの使い分け
・FT8/CW/SSBともにARCP-590(KENWOOD純正ソフト)を使用。
周波数変更がマウスクリック操作で簡単にでき、スプリット運用も楽にできる。
・CW/SSBのコンテストとRTTYにおいてはRCC-590(自作ソフト)を使用。
VFOダイヤルで周波数微調整ができる。
(手元590Sで実機590SGと同じ無線機操作ができる楽しみもある。
自作ソフトなので愛着もあるし・・・)
・リモートエンコーダーを自作。(2023/01/25更新)
ARCP-590を使用している場合でも自作のVFO用ダイアル(リモートエンコーダー)
で周波数微調整が可能となった。
b 操作所からの遠隔CW自由文送信
CW-VOXやブザー音送出器により実現。コンテストでのランニングも可能。
ただし、安定した運用は無理。(音量の何か所かのレベル調整が頻繁に必要)
なのでDXハンティング程度では遠隔操作ソフトの定型文送信機能を使用。
c リグとWSJT-XやTurboHAMLOGの同期化(VSPEを利用)
WSJT-XやJTDXでバンドや周波数を変更すれば、あるいはリグの操作でバンドや周波数を
変更すれば、自動的に他へハムログへも含めてチェンジされます。
PW1やアンテナ切替も自動的にバンドチェンジされます。
特にVSPEについて説明します。
リグと接続しているCOM7を今まで(VSPEを利用するまで)はARHPが占有せざるを得ず、
WSJT-XやJTDXからの周波数変更や送信操作をCATで行えず手動操作やVOXで行っていた。
あきらめていたが、一念発起しVSPE(Virtual Serial Ports Emulator、参考資料8)の利用を
試してみたところ結果は大成功。
VSPEのSplitter機能を使用してCOM7を共用(Split)することにより、CATデータを共有でき、
リグ・WSJT-XやJTDX・TurboHAMLOG・ARHP相互に周波数等を同期させることが可能になった。
もちろん送信操作もVOXからCATに変更。
VSPEを使用しても確実に動作させるには仮想ポートの定義にコツがあります。
そのことは別にまとめたのでこちらを見てください。
d 上記のようにVSPEを利用したので次の操作性運用性が向上
・FT8モードのF/H運用で登録されていない周波数でペディが始まった場合、
リグ操作で即座にQSYできます。リグの遠隔操作でも同様です。
・IFバンド幅を狭めることもリグ操作で可能なので、デコード(受信性能)の向上を
図れます。リグの遠隔操作でも同様です。
IFバンド幅に限らず、ノッチフィルターやノイズブランカー/ノイズリダクションの
操作もできます。(これらの受信調整操作でデコードが向上するかどうかは電波状況によります)
e 遠隔運用ならでのメリットを享受
操作所が送信所から離れているので、自局の電波の強さを他局と比べたり、送信している周波数が
他局と重なっていないかを監視できます。
4.快適受信/快適操作全体図
上記各ツールの詳細は次のリンクおよび参考資料を見てください。
・RCC-590 手元リグ操作で遠方リグを遠隔操作 リグ間自動同期 遠隔操作クライアントソフト
・遠隔CW自由文送信用正弦波送出器:CWトーン音をCW-VOXへ送る装置
・CW-VOX:CWトーン音をキーダウンに変換しリグへ伝える装置
・ABS:CAT信号を受け、PW1とアンテナのバンドを自動切り替えする装置
・マイク切替SW 操作所PCへ入力する信号(マイクとパドルによるCW信号)をSWで切り替えていたのを止め
て「PCのマイクジャックへの差し替え」に単純化しました。(2020/06)
参考資料
1 K1JT WSJT Home Page
2 KENWOOD TS-590 Gシリーズ「遠隔操作」運用ガイド
3 KENWOOD ARCP-590G
4 KENWOOD ARHP-590G
5 KENWOOD ARVP-10
6 IchiGeki >Brynhildr(ブリュンヒルデ)リモートデスクトップ
7 JA1HHF JA1HHF PICによるエレキー
8 Eric Young and the OpenSSL Project VSPE Virtual Serial Ports Emulator
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