Home
ABS Ver7,8 の開発 JA3OOK 中村 利和
ソースプログラムを公開 Ver.8A '20/04/28
Ver.7.0 '17/06/19
アンテナとリニアアンプのバンドを自動的に切り替える機器(ABS)の ver7 の紹介です。
ABS開発の経緯についてはここ、当局の無線局遠隔操作の全体像についてはここを参照してくだ
さい。
なお、本ABSが ver.7 で、番号が飛んでいますが気にしないでください。
さらに Ver8A でソースプログラムを公開しました。
All rights reserved JA3OOK 中村 利和
1.ABS(ANT&PW1自動バンド切替機)全体像
・構成
TS-590S−−>RS232C−−>ABS(PIC)−−>アンテナ切換リレー
|\
| \
CI-V | \BAND DATA
| \
| \
IC-PW1 FL-7000
・ABSはTS−590からRS-232C経由でバンド情報を得る。
・ABSはバンド情報に応じて アンテナ切換リレーをON/OFFし、CI-V と BAND DATA を出力
する。
2.ABSでできること
TS−590Sのバンド切替や周波数変更に自動的に連動して
・バンドに対応したアンテナの自動切換(6系統から8系統へ拡大)
・IC−PW1のバンド自動切換
・FL−7000のバンド自動切換
OPERATE SW のON/OFFはIPリモコンでできるのでABSの機能から削除。
強化機能
・アンテナ切替リレーのドライバーにフォトカプラを採用し、アンテナ系と制御回路系を
電気的に遮断
・16文字2行のLCDを搭載し、周波数やアンテナリレー番号などを表示するとともに、
バンドとアンテナの対応を白色赤色のプッシュスイッチ操作で自由に変更できる
・チョークコイルやコンデンサをRS-232C系やCI-V系など随所に追加
・ADM3202AN(RS-232Line Drivers/Receivers)の動作電圧や付加コンデンザ値の変更
動作電圧や付加コンデンザ値は参考資料1 TS-590Sの回路図を参考にしました。感謝
します。
・PICやADM3202のプリント基板への取付をソケットから半田付けに変更
・プリント基板をユニバーサル基板からCADで設計し製作した両面基板へ変更
CADを使用したプリント基板の作成の様子はここを見てください。。
これらの強化により、
・強電界下でのABSへの回り込み防止性能の向上
(回り込みによるLED点灯現象の可能性減少、トロイダルコア使用個数の削減)
・ABSから発射される高周波ノイズの低減
(HFハイバンドへノイズを与えることがあった)
・夏冬/昼夜の寒暖差と経年変化によるソケットとICピンの接触不良を完全防止
(PICのピンの接触不良トラブルが毎冬1回発生)
に効果が大いに期待できます。
3.ABS基板(第7世代)のハードウエア回路図
基板上の回路についての補足説明。
・リレードライバーに東芝フォトカプラ(TLP627)を使用。リレー駆動最大電流を少しでも
大きくしたいのでTLP627-2、-4は使用せず。(参考資料6)
・引き続き「PIC18F25K22」を採用。(非同期通信を行う相手がTS-590SとPW-1の二つになるの
でUSARTを二つ装備しているMCUを使用)
・16文字2行のLCDを使用し、周波数やアンテナリレー番号などを表示。
SC1602BS*B(バックライトなし)を推奨。
・バンドとアンテナ切替リレーの対応など動作条件を柔軟に設定できるようプッシュスイッ
チを赤白2個装備。
このPICにはEEPROMを内臓しているので、設定した動作条件をプログラムで記憶させるこ
とがプログラム次第で可能。
・電波出力が大きいので高周波回り込み対策に力を入れてある。
・PICは内部発振で16MHz。(64MHzの高速は必要ない)
・ICをプリント基板に直接半田付け。
なのでPICへのプログラミング端子を装備し、プログラミング時に電源供給などを切断で
きるスライドスイッチを装備。
・ABS心臓部への電源はTS-590本体裏面のAntenna Tuner用コネクターから供給。
アンテナリレードライバー回路への電源はDC電源装置から供給。
手動でアンテナを切り替えられるようにロータリーSWを接続可能。
これは、他のリグで運用する場合に、TS-590のを切っておいても手動でアンテナを切り替
えられる配慮。
部品を実装した基板がこれ。基板サイズ 77.47mm×99.06mm
LCD(液晶デスプレイ)は抜いた状態。コンデンサ(C13〜C20)やチョークコイル(L1〜L5)は未
実装。必要なら実装する。(現時点で回り込みがないし、FL-7000を使っていない)
4.ABS基板の周辺回路
ABS基板の周辺回路とアンテナ切替リレーボックスの回路は次のとおり。
回路についての補足説明。
・運用中でない時間帯や動作中でない同軸は全ての同軸の芯線と外皮をタワーの鉄骨に接地。
少しでも雷対策になることを期待してのこと。
・動作中の同軸の外皮は他の同軸の外皮と接続させず、干渉を避けている。
・リレー駆動コイルと並列にダイオードを接続。これは駆動コイルオフ時のサージ防止で定石。
高周波をバイパスさせるためにコンデンサーは入れることはしていない。その理由は送信ハ
イパワーで誘起される高周波脈流の直流化防止(参考資料5に従った)
・リレー駆動用多芯ケーブルはシールド付を使用。
シールド外皮を「ABS基板側の、DC電源装置からきているマイナス側」
に接続する(上記回路図とおり)と高周波誘導の防止効果が一番高い。
シールド外皮のアンテナボックス側は無接続(解放)。
5.ABSプログラムの要点。
a バンドとアンテナリレーの対応
・バンド定義
1.9メガ帯 から 50メガ帯 まで Aバンド から Jバンド と定義。
・アンテナリレー定義
リレー1 から リレー8。
・バンドとアンテナリレーの対応
白ボタンと赤ボタンの操作で自由に対応付け可能。
設定された対応はメモリー(PIC内蔵のEEPROM)に記憶され次回立ち上げ時も有効。
・操作方法の詳細は8項に記述。
b TS-590Sとの通信プロトコル
・TS-590との接続 RS-232Cケーブル(メス:メス)を使用
ノーマル/クロスどちらでも使用でき、ABS基板上のジャンパーピンで設定
・通信速度 9600/19200bps から選択
選択された速度はメモリーに記憶され次回立ち上げ時も有効
・通信コマンドは FA;/IF;/AI2; から選択
選択されたコマンドはメモリーに記憶され次回立ち上げ時も有効。
FA;やIF;コマンドの場合、ABSが発信する間隔は1.3秒程度。
AI;コマンドは一回だけ発信。
各コマンドの規約はKENWOOD発行の「参考資料2 TS-590_pc_command_j.pdf」
によった。
c IC-PW1との通信プロトコル
・IC-PW1とCI-Vで接続 モノーラル・オーディオケーブルを使用
・通信速度 9600bps または 19200bps
・アドレス ABS:機種コード 0x80 PW1:機種コード 0x54
・CI-Vデータの規約は「参考資料3 CT-17 取扱説明書」によった。
d FL-7000との通信プロトコル
・バンド周波数とA,B,C,Dの対応はFL-7000の遠隔操作に記述してある。
・信号はTTLレベル。
e ABSのコマンド処理概要
・TS-590からの受け取ったコマンドを判定
・受け取った周波数によりバンドを認識
・バンドに対応する
アンテナリレー(に対応するポート)をON、他をOFF。
CI-Vのデータを組み立てIC-PW1へ送信。
BAND DATA(に対応するポート)をON/OFF。
6.ABSの収納ケース
一つのプラスチックケースの中に左から
・CW−VOX CWモニター音キーダウン変換器
・ABS(ANT&PW1自動バンド切替機)
・ローテーターリモートリレーユニット基板
を格納し、ケースフロントにロータリーSWと表示LEDを取り付けている。
7.謝辞
このような機器の製作は初めて。しかし、JA4BUAさんが作られていることを知り(参
考資料5)、さらにJG7EHMさんも作られていることを知り(参考資料7)大いに勇気
づけられ着手しました。感謝します。
8.ソースプログラムを公開(2020/04/27)
【著作権】
OOK-Labo (JA3OOK 中村 利和) にあります。
【確認と遵守事項】
本ソフトおよび説明文を使用すること、引用すること、参考にすることなどにより、
いかなる不利益や不都合、不具合、故障などが生じても自己責任でお願いします。
どのようなことがあっても当方は責任を負いません。
PIC、MPLAB X IDE、XC8に明るい方が活用されることを想定しているので詳しい説明は割愛します。
a ABSプログラム
Ver8A
・ABS HEXファイル
・ABS ソースプログラム一式
注意
EEPROMのアクセス関数が古いことが理由でコンパイル時ワーニングメッセージが出ます。
PICあれこれと失敗談 の特に 12、17項 を参考に、無視するように対策してください。
開発環境 Microchip社
・MPLAB X IDE v3.40
・XC8 C Compiler (Free mode) V1.40
・PICkit3
MPLAB X IDE にProjectを作るとき文字(Encoding)の種類はShift_JISを指定。
b プログラミングについて
PICへのバイナリープログラムの書き込み(プログラミング)について述べます。
・プログラミングを行うまえに、
電源端子 DC_IN(TRX) への電源供給を切ってください。
SW1およびSW2 を左へスライドしてください。(不要な回路を切るためです。
左へスライドしないとPICkit3を挿しにくい構造にしてあります)
・PICkit3を挿して、プログラミングしてください。
・プログラミングが終わったらPICkit3を抜き、SW1、SW2を右に戻して、
DC_IN(TRX)へ電源供給してください。
c 操作方法など
ABSのバージョンの確認方法
ABSに電源を入れた直後にLCDに一瞬だけ表示されます。
LCDの画面説明
運用状態の画面です。各種セッティングもこの画面で行います。
上の行 左から、「14.1」は送信機(TRX)からRS-232C経由で送られてきた周波数14.1MHzを
示しています。
その周波数をABSはバンド[4」(右の画面では「E」)と認識していることを示しています。
次の「1371482485」はバンド名。その下の数字は各バンドごとに設定されているアンテ
ナ切替スイッチ番号を示す。
右の画面のようにバンド名を「A〜J」で表示することができ、後で述べる設定方法で
切替が可能です。
バンドとバンド名の対応は次のとおり。
バンド 1.8~1.9 3.5~3.8 7 10 14 18 21 24 28~29 50
バンド名 1 3 7 1 4 8 2 4 8 5
バンド名 A B C D E F G H I J
アンテナ切替スイッチ番号は1〜8が設定でき、ABS基板上のリレー接続端子番号
と対応しています。
下の行 左から、「96」はTRXとの通信速度9600bpsを示している。96:9600bps/192:19200bps。
その右「F」はABSがTRXへ発するPCコマンドを表し、F:FA;、I:IF;、A:AI2;。
その右「5」はABSが選択したアンテナ切換スイッチ番号を示している。
(TRXから送られてきた周波数が14.1なので、選択したSW番号が5で正しいことを
目で確認できるように表示してあります)
設定の操作方法。
上記画像の画面が出ていれば設定をいつでも行える。
設定は白ボタン(SW3)と赤ボタン(SW4)で行う。
各ボタンの意味 (長押しとは3秒強ほど押すことです)
白ボタン短押し:設定項目へ移動。
設定項目が点滅状態の場合は希望の内容が表示されるまで、短押しを
繰り返す。
白ボタン長押し:設定操作の中止。(上行の中央に canceled と表示される)
赤ボタン短押し:設定項目の決定。(設定項目が点滅を始める)
赤ボタン長押し:選択された内容でメモリーへの書き込む。(accepted と表示される)
50MHzバンドにアンテナ切換番号を8に設定する操作例
・50MHz(5 or J)に対応するアンテナ切替SWの位置(上記画面では右下端の6の位置)に
「カーソル」がくるまで「白ボタン短押し」を繰り返す。
・カーソルが目的位置まできたら「赤ボタンを短押し」する。その文字が点滅を始める。
・点滅状態はメニュー選択を意味しており、「希望の内容(今回は8)になるまで、
白ボタン短押し」を繰り返す。
・「赤ボタンを長押し」する。
参考 出荷時へ戻す操作(メモリー PIC内蔵のEEPROM への既定値での書き込み)は
「赤ボタンを押しながら電源投入」 で行う。
KENWOODトランシーバー(TRX)との接続
・RS-232Cとの接続の通信スピード(9600bps/19200bps)を一致させておくこと。
・ABS側で設定するPCコマンドの既定値は F(FA;) です。これで大抵うまくいくようですが、
うまくいかなければ IかA に変更してください。
・ABSが周波数を正しく認識し、アンテナ切換スイッチが正しく選択されていれば大丈夫です。
ICOM IC-PW1 との接続時の注意。
PW1のマニュアル 15ページの「4−1電源を入れる前に」に従って、
・電源やアース線の接続
・REMOTEジャックの接続
・CI- Vのデータ設定
IC - PW1のリセット
初期設定
を行ってください。
なお、私はマニュアルの「ケース1:INPUT1コネクターにエキサイターを接続するとき」
の形態で行っています。(ABSをアイコム製エキサイター 機種コード 0x80 として見せている)
d ABS基板 KiCadデータ
・KiCad での基板製作(2作目)にて公開。
参考資料
1 KENWOOD TS-590 取扱説明書
2 KENWOOD TS-590 PCコマンド集
3 ICOM CT-17 取扱説明書
4 ICOM IC-PW1 取扱説明書
5 JA4BUA 情報通信技術コンサルタント くわ→アマ無線→
アンテナ自動切替インターフェースANT-57 および アンテナ切替リレー作成の常識と落とし穴
6 東芝フォトカプラ 赤外LED +フォトダーリントントランジスタ
TLP627, TLP627-2, TLP627-4 TOSHIBA 発行
7 JG7EHM JG7EHMのHP→IC-PW1用周波数同期装置
直前の画面へは ブラウザの戻る をクリックしてください。Topに戻るにはHome