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KiCad で作りました
初版 Ver.1.0 '16/09/13
All rights reserved JA3OOK 中村 利和
私にとって生まれて初めて CAD を使いました。プリント基板CAD『KiCad』(参考資料 1)です。
最初は分からないことが多かったですが、なんとかプリント基板をメーカーに発注でき、きれいな
仕上がりの基板が届き感激しました。
もちろん部品を取りつけてノートラブルで動作させることができました。
KiCadの操作方法は戸惑いましたが、割と早く慣れましたので操作方法の説明は参考資料2などに
ゆずり、ここではそれ以外のことをまとめました。
1.KiCadのきっかけ
なんといっても『トランジスタ技術 2016年7月号』を本屋で立ち読みし、興味を引かれて買
ったことにつきます。
ちょうどそのころ、いつものようにユニバーサル基板を使って組もうとしていた回路があった
のです。そのトラ技をじっくりと読み、私にもできそうに思えてきました。
友人にトラ技のことを話したら、ぐいっと背中を押してくれました。
2.KiCad回路図エディタ
長い間、水魚堂提供の「回路図エディタ」を使っていたので、KiCadもすんなり使えました。
しかし、
・抵抗の記号が小さくて抵抗値(定数)が見づらいので、KiCadコンポーネント ライブラリ エデ
ィタで枠を大きくしました。まだ改善の余地があります。
・そのコンポーネント ライブラリ エディタの操作で、自分好みに編集した後の保存ができな
いのです。ようやく「コンポーネントを更新するアイコン」をクリックすることが必要と分か
るまでに長い時間がかかりました。プルダウン・メニューばかり探してたので分かりません
でした。知ってしまえば簡単なことでした。
3.KiCadプリント基板エディタ
ランド、ビア、レジストなどといった専門用語が分かりませんでした。幸い上記のトランジス
タ技術 2016年7月号に素人向けの解説が書かれており大いに役立ちました。
これらの意味が分かっても、次にランドのサイズ、ビアのサイズ、ドリルや穴のサイズ、配線
幅、最小配線間隔など、ズブの素人である私にとって、どのサイズを指定するのが適切なのか全
く見当がつきません。
KiCadのヘルプやマニュアルには推薦サイズが書かれていませんが、それは当たり前のことです。
手元にあったジャンク基板を片っ端からノギスで測りましたが、基板ごとに色々で、自信が持
てるサイズを決められません。
そこで大いに役立ったのが、きばん本舗さんがWebに載せておられる『きばん本舗 プリント
基板設計基準書』です。ここに書かれてることを参考にして私なりの次の設計方針を決めました。
初めての作品となる『CW-VOX』が対象です。
a 使用する部品 チップ部品は使わない
b 半田付け 手半田
c 基板の層数 2層(片面と費用が同じため)
d グローバル デザインルール(単位 mm、以下同じ)
最小配線幅 0.5
最小ビア径 1
マイクロビアを禁止
e ネットクラス クリアランス 配線幅 ビア径 ビアドリル
Default 0.5 0.5 1 0.5
GND 同上 0.8 同上 同上
VCC 同上 同上 同上 同上
電鍵やフォトカプラとの配線もVCCの扱いとする
f パッド - レジストのクリアランス 0.2 レジストの最小幅 0.1
g ランド
ドリル穴 ランド径
D <= 0.6 0.8 1.6
0.6以下はC、R、ICなど、NJM567D、NJM2072D、TLP627も該当する。
D > 0.6 D+0.2 D+1
Dを実測し次のとおり決定
ピンヘッダー、ソケット 1.2 2.0
JM78M06FA 同上 同上
半固定VR 同上 同上
Dとは部品のリードの最大径。実測するか資料を調べる。
ドリル穴とはドリルでの仕上がり穴径(ドリルの歯の径ではない)
ランド径はきばん本舗さんの基準より0.2大きく設定した。(丈夫さ優先)
h 部品間のランド間隔 1/10インチ
i 部品のリード線(ランド)間隔
1/6WのR 縦型 1/10インチ
1/6WのR 横型 2/10インチ
1/4WのR 横型 3/10インチ
小型のC 1/10インチ
中型のCやVRなど 1/10インチきざみで部品に合わせる
L1 2/10インチ
j シルク印刷の対象 リファレンス(部品番号)、部品形状、ICやTR名称、
コネクターに接続する名称、+−記号など
上記の設計方針に基づいて、プリント基板エディタのパラメーターを設定し、使用するフッ
トプリントごとにKiCadフットプリントエディタで変更し設計を進めていきました。
フットプリントごとに変更が必要な項目は次のとおりです。
実部品を調査しランド間隔基準に合わせて作図、ドリル穴径を変更
部品記号の形と大きさを変更、
部品記号やリファレンスにシルク印刷属性を与える
変更が必要なフットプリントが多いだけでなく、試行錯誤も重なって大変時間がかかる作業でし
た。 次の設計からは楽になるでしょう。
組み上げてからの評価です
・配線幅とクリアランス、ビア径 ビアドリル
今回はこれでよいですが、もっと配線が多くなる場合は、細くしてクリアランスも細
くすることが必要になるでしょう。
・ランドの径やドリル穴
スムーズに部品を取り付けることができ、半田付けも順調にでき正解でした。
・ランド間隔
今回は正解でしたが、高密度実装する場合は1/20インチなどに狭くすることが必要で
しょう。
・部品のリード線(ランド)間隔については反省点が多い
1/6WのR 縦型 1/10インチ → 今回の部品密度では横型に統一できた。
1/6WのR 横型 2/10インチ → 3/10インチ(リード線の折り曲げに余裕を持たせる)
1/4WのR 横型 3/10インチ → 4/10インチ(同じ理由)
小型のC 1/10インチ → 正解
中型のCやVRなど 1/10インチきざみで部品に合わせる → 正解
L1 2/10インチ → 4/10インチ(リード線の折り曲げに余裕を持たせる)
★このように反省点が多いですから、参考にしたい方は、2作目の設計方針を参考にして下
さい。
部品記号(コンポーネントという)とフットプリントの対応付けは回路図エディタで行うこと
を推奨します。
プリント基板エディタでも対応を変更できるが、一貫性を持たせるためには回路図エディタで
行うことがベストです。
3.基板メーカーの選定と発注
基板メーカーの選定に迷いましたが、Elecrow(参考資料5)に決めました。トラ技に載ってい
たこと、Webにここへ発注した記事がいくつかあったこと、User Reviews が良かったからです。
基板製作を受託する上での技術的条件がElecrowのWebに載っていますので、それに合っている
かどうかの確認をしました。ランド径、ビア径、パターン幅などです。問題ありませんでした。
Elecrowが要求してる次の発注ファイルを作ります。拡張子がポイントです。
Top layer: pcbname.GTL 部品面パターン図
Bottom layer: pcbname.GBL はんだ面パターン図
Solder Stop Mask top: pcbname.GTS 部品面レジストマスク図
Solder Stop Mask Bottom: pcbname.GBS はんだ面レジストマスク図
Silk Top: pcbname.GTO 部品面シルク図
Mechanical layer : pcbname.GML 基板外形図
NC Drill: pcbname.TXT ドリル図
(Silk Bottom: pcbname.GBO はんだ面シルク図 今回は不要)
(pcbnameは英字を使って自由に名付けます)
発注ファイルの作り方は次のとおり。
KiCadプリント基板エディタ→ファイル→プロット→製造ファイル出力画面で指定する。
・「出力するレイヤ」にチェック
・「Protelの拡張子を使用」にチェック
・他は既定値(正直意味が分からない)
『シルクをレジストで抜く』をチェックすると、半付けしたい箇所にシルク文字がある
場合にシルク文字を消してくれて半田付けができるようになるようだ。
(半田箇所とシルク文字が重ならない設計ならチェックしてもしなくても同じこと)
ガーバーの設定画面。
ドリルの設定画面。
「ドリルの単位」をmmにチェックしておきます。
作られたドリルファイルの拡張子は .drl なので手作業で .TXT に変更する。
でき上ったこれらのファイルの中身を KiCadガーバービューア GerbView でしっかり確認します。
これら7個のファイルをzipにアーカイブすると、Elecrow へアップロードするファイル
が完成します。
Elecrowへの支払い手続きは PayPal で行いました。
注文請書がこれです。
Products
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1 x 5pcs- 2 layer PCB (SPP01005PP) = $11.50
Layer 2
PCB Thickness 1.6mm
Copper Weight 1oz 35um
PCB Size 5cm Max * 10cm Max
PCB Color Green
Suface Finish Hasl (lead free)
PCB Stencil NO Stencil
Panelizing Single PCB with milling
Lead time Shipped in 4 to 7 days
File 55573. CW_VOX_ver30.zip
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Registered Airmail - Weight: 110 g. 7 - 25 Days: $4.59
Sub-Total: $11.50
Total: $16.09
スケジュール実績です。
第1日目 オンラインで発注。
その日の夕方に技術的チェック開始の連絡があった。
第3日目 製造工程に入れたとの連絡があった
第7日目 発送したことと追跡番号の連絡があった。4PX Express のWebで追跡可能とのこと。
調べると、荷受け済みとの記述があった。
その後、4PX Express や日本郵便のWebで毎日のように調べているが動きなし。
第11日目 やっと日本郵便のWebに動きが載った。
7日目15時に広州市の国際交換局を出ていた。
第11日目の早朝01時に川崎市の国際交換局に到着し(船で3日半)、通関手続きを経て、局から
発送したのが06時とのこと。
第12日目 昼過ぎに自宅に配達。
発注から12日目で届いたこと、安いこと、日本郵便のWebで追跡を継続できたこと、書留郵便で
届いたこと、通関手続きなどが早朝の5時間で終了していて早いこと、が驚きでした。
5枚注文しましたが7枚届きました。 基板サイズ 縦:49.53mm 横:99.06mm
この基板で作ったのが CW−VOX です。
参考資料
1 KiCad kicad.jp
2 KiCadことはじめ
3 トランジスタ技術 2016年7月号 CQ出版社
4 きばん本舗 プリント基板設計基準書
5 Elecrow The PCB Prototyping service
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