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遠隔操作でのパドルによるCW送信 私の歴史
最新更新 2024/03/02
JA3OOK 中村利和
2014年初夏のころ、遠隔環境でパドルを使ってCWを送信する方法の検討を始めた。
色々考えた方式。
その結果、方式4が妥当と考えた。その場合のCW送受信号の流れを整理したのが次の図。<図の改訂 2016/09/12>
方式4の実用化 太線がパドルによるCW送信信号の流れ
方式4の1(2014年)
送信所用に 「OPアンプ式シュミット回路」を製作、これを『旧型CW−VOX』と呼ぶ。
詳しくはOP-AMPを利用したCW-VOX
操作所用に 「OPアンプ式オーディオ発生器」を製作してオーディオ周波数を送信。
回路図はこれ。
実験結果:符号と符号の間隔が一定せず、例えばVがUに化けてしまうといった問題が発生し失敗。
方式4の送信所用に CW−VOX を開発(2016年)
送信所で、トン・ツー音を電鍵のON/OFF信号に変換する機器であり、トンとツーに合わせて動作する
VOXみたいなもの。『CW−VOX』と名付けた。
必要な機能は次のとおり。
・一定の信号レベル(しきい値)とヒステリシス特性を持つON/OFF機能
・音声信号の増幅とレベル調整
・無線機のCWキージャックの電気的機械的仕様に適合すること
2年前にこれ用の機器(OPアンプ式シュミット回路 旧型CW−VOX)を製作した動作が安定せず使用を中止していた。
この問題を改善したくて2号機を製作した。<2016/09>
・トーン・デコーダ機能(JRC製専用IC NJN567D を使用)
一定のレベル以上の特定の周波数を感知する。周波数と幅を回路定数で設定可能。
単周波数や複周波数でのトーンコントロール用のICである。雑音に強いコントロー
ルができそうだ。
・レベル検出機能(同じくJRC製専用IC NJM2072D を使用)
一定のレベル以上のオーディオ全周波数帯域を感知する。
音があるときでだけ録音するといった使い方のためのICで、デレイ時間も回路定数
で設定可能。今回の目的に使用できそうである。
2年前にOP-AMPで自作したものと原理は同じだか、プロが設計したもの。
この二つのJRC製ICの存在はJA1の某OM(今年2016の夏、軽井沢でのハムミーティングで
知り合いになりました)から教えていただきました。感謝します。
・アンプ機能
トランジスタ1個のアンプ。
補足事項。
・キーイングに旧型はトランジスタを使用していたが、今回はフォットカップ
ラー(TOSHIBA TLP627)を採用した。(高周波の回り込みの予防)
・JRCの両ICの設計ガイドに基づき電源電圧を6Vで設計した。これにより、ABSから供給す
る電圧を5Vから12V(大もとはTS-590から出力されるAT用DC電源)に変更した。
・LEDを外付けする。電源が入っていれば点灯し、CW符号に合わせて滅灯する。
回路図は次のとおり。
・トーン・デコーダ部の中心周波数はC(Film1、Film2)とR5の計算式で決まる。
希望する周波数に正確に合わせたい場合は、複数のCとRから実験で選んでから本付けす
る。Film1、Film2はポリエステル型コンデンサとポリプロピレン型コンデンサ。組み合
わせている理由は温度補償を期待してのこと。
C9はフィルタの帯域幅の設定用。必要に応じて追加し、値はカットアンドトライ。
私は追加していない。
・アンプ部のC7はレベル調整用でありRでも可。必要に応じて追加し、値はカットアンドトライ。
私は追加していない。
・アンプを使うか使わないはジャンパー線(JP1、JP2)で設定し、レベル検出部とトーン
デコーダ部の選択はジャンパー線(JP3)で設定する。
出来上がったCW−VOXの写真がこれ。
今回、初めてプリント基板CADを使用して開発した。
使用したCADは『KiCad version 4.0.2』。これの使用談は別に記載した。
CADからの出力データでプリント基盤メーカーに発注し、基盤への部品の取り付けは私が行った。
方式4の2(2016年)
送信所用に 「CW−VOX」を使用。
操作所用に 「OPアンプ式オーディオ発生器」を使用。
実験結果 レベル検出(NJM2072D)で動作させてみる。
アンプは使用せずとも動作する。
しかし、動作が安定しない。低速CWしかできない。
方式4の3(2018年)
送信所用に 「CW−VOX」を使用。
操作所用に 「ブザー音発生器」を製作。
これまでの「OPアンプ式オーディオ発生器」は出力が不安定でCW-VOXが安定して動作しない問題があり、
次のように設計からやり直した。
ブザー音発生器の主な仕様。
・ブザー音(高調波音)の発生はマイコン(PIC)矩形波方式
矩形波出力(800Hz)なので高調波が盛大
・パドル、バッタキー、PCキーイング(RS-232C出力とUSB出力)が可能
・ブザー音(トーン音)の出力はトランジスタコレクター駆動
・手元TRX(トランシーバー)のキーイングも可能
・パドルキーヤーに JA1HHFさんの OKey-F88 を改造して使用
なお、JA1HHFさんの OKey-F88 はとても打ちやすい良いキーヤーだと思います。
回路図は次のとおり。
上(超小型基板とUSBオス端子):Arduino用 CH340 USBシリアルモジュール完成品 by ちっちゃいものくらぶ
中(横長基板):USB/232C CWブザー発生 ボード(自作)
下(中型基板):JA1HHF OIkey-F88 ボード(JA3FGNさんから頂戴)
実験結果
レベル検出(NJM2072D)で動作させてみる。
アンプは使用せずとも動作する。
前よりも安定です。高調波が盛大に含まれていることでCW信号有無のエネルギー差が大きくなったからだと思う。
しかし、まだまだ安定してCW符号が出ません。
オーディオ信号レベルの設定箇所が多岐にわたり、さらに調整が微妙です。
・『遠隔CW自由文送信用ブザー音送出器』の送出レベル設定
・操作所PCマイク切替SW
・操作所PCのマイク入力レベル
・送信所PCの音量ミキサーのスピーカーレベル
・CW-VOXの入力レベル
そして、SSB送信などとの兼ね合いでいつの間にか触っているとか・・・、経年変化もあります。
レベル検出(NJM2072D)でのCW符号送出は安定稼働とは言い難いのが正直なところで、実用性は難しい。
トーン・デコーダ(NJN567D)でも動作するが、周波数帯域がかなり狭く感じられモニター
音発生周波数の調整が微妙なのと精度の維持が心配で、実使用は無理に感じる。
オーディオ伝送ソフトに「ARVP-10H/ARVP-10R」を使用。ARVPには音声レベル調整機能が
付いていないこともメリットになる。
Skypeの使用は難がある。Skypeの音量設定が大変むずかしい。理由はたぶん「Skypeの機能の一つである
エコー処理が強すぎるからか?」 エコー処理機能を殺すことができればいいのに!
方式4の4(2020年)
送信所用に 「CW−VOX」を使用。
操作所用に 「正弦波発生器」を使用。
正弦波発生器の主な仕様。
・正弦波周波数の安定を第一の設計目標にする。
PICの動作クロックは外付けセラミック発振子で発生させ、周波数の安定を図る。
周波数安定度はこのセラミック発振子の周波数安定度に拠る。
(セラミック発振子およびトーン・デコーダの部品の温度係数や経年変化係数が同傾向
であることの偶然を切に願う)
・可変抵抗器で発生周波数を可変でき、最適周波数を選択できる。
選択した周波数をメモリーに記憶させ、以後は、電源投入時も記憶した周波数で動作させる。
よって、可変抵抗器の値が温度変化などで動いても正弦波周波数が動くことはない。
・PICでPWM信号を発生させ、ローパスフィルターで正弦波に整形。
・出力周波数可変範囲を750〜810Hz程度とする。(CW-VOXのトーン・デコーダ部の中心周波
数の実測値が約780Hzなので)
・正弦波を低インピーダンスでも出力でき、ヘッドホン駆動が楽に可能
・周波数設定作業中以外は可変抵抗器の値の読み取りを停止し、CPU処理待ちを最小限にする。
・パドル、バッタキー、PCキーイング(USB出力)が可能で、手元TRX(トランシーバー)の
キーイングも可能。(必要性はともかく)
・パドルキーヤーに JA1HHFさんの OKey-F88 を改造して接続。
全回路図は次のとおり。
回路の補足説明。
・エレクトロニックキー(JA1HHF OIkey-F88のPIC RB1 CW符合有時:5V) または
PC(USBシリアルモジュール経由CON2 CW符合有時:0V)からCW符号を受け取り、
その符合に合わせてPWM波を発生させるとともにTXのキー端子(J2)の駆動も行う。
縦ぶれ電鍵をCON2に接続することも可能。
(TXキー端子の駆動はOIkey-F88のTR1 を活用)
・PWM波はローパスフィルターで整形され正弦波になる。
正弦波の一部は操作所PCのマイク端子へ入力される。
正弦波の一部はTRによるエミッタフォロワで低インピーダンス化され(CON3)、ヘッドホン
でモニターされる。
このヘッドホンは同時に受信音を聴くことも可能である。
・エミッタフォロワはマイクとヘッドホンの音量レベル調整の相互影響も防止しており、
マイクとCWモニター音それに受信音のレベル調整がそれぞれ独立して可能である。
・正弦波発生ボードにプッシュスイッチが一個あり、発生させる周波数のメモリへの記憶操
作を行う。(操作方法は後述)
・LEDを全体で二個備えており、電源が入っていれば点灯し続け、CW符号の長短に合わせて
滅灯する。
写真は次のとおり。
上:JA1HHFさん設計配布 OIkey-F88 ボード(JA3FGNさんから頂戴)
下:本機の心臓部 正弦波発生ボード(自作)
CW-VOXのトーン・デコーダ(NJN567D)機能と組み合わせて実環境でテストしました。
その結果。
アンプは使用せず(不要)。
オーディオ信号レベルの設定箇所が多いですが、レベル調整が『トーン・デコーダ(NJN567D)』
で動作させるよりは微妙でなく、大変楽。
直接関係する調整箇所。
・操作所PCマイク端子への正弦波送出レベル設定(VR2)
・操作所PCのマイク入力レベル(SSBマイク送信との兼ね合い)
・送信所PCの音量ミキサーのスピーカーレベル(SSBマイク送信との兼ね合い)
・CW-VOXの入力レベル
・ヘッドホンでのCW符号モニター音量(VR3)
しかし、これでの実運用は自信がない。なんとかせねば。
その後 方式2(CW符号ごとに開始終了をデジタル化しネット経由で送信する方式)をトライ。
方式2ー1(2022年)
操作所と送信所双方に ESP32-WROOM-32(Wi-Fi内蔵のArduino系マイコン)を使い、
無線LANでルーターと繋いでCW信号を伝える方式を製作。(それぞれのPCを経由しない)
写真はその送信所側のESP32-WROOM-32。
結果は実用的でない。(遅いCW速度でないと信号が跳んでしまい誤字になる)
Wi-Fi内蔵のマイコンの使用の製作を優先した理由は
「PCを経由するとWindowsOSのオーバーヘッドで速度がでないだろう」との思い込みからでした。
方式2ー2(2024年)
操作所と送信所双方のPCに USBシリアル変換モジュール をUSB接続し、CW信号を伝える方式を製作。
結果は実用性あり。(かなりな高速CWに耐えられるしネット状況が良ければ誤字も少ない)
「ストリーミング方式」も選択でき実用性がさらに高まりました。
別ページに記した。(2024/03/01)
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