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6EM7全段差動型プッシュプル・アンプ             Rev.1.0 '07/12/12
                                Rev.2.0 '08/03/18
                                Rev.3.0 '08/03/28
                      All rights reserved JA3OOK 中村 利和
 昨年、6CA7(EL34)3結による差動型プッシュプル・アンプを製作し、その音の
透明感や定位感に大変感動しました。
今回この高品位な音の再現と低コスト化の両立をねらって改造し、6EM7による差動型プ
ッシュプル・アンプを製作しました。
6EM7は不等双3極管なのでドライバー段も6EM7とし、全部で4球の構成です。
 今回も設計と製作において、木村 哲 氏による「情熱の真空管アンプ」(文献1)を大
いに参考にし、真空管の規格特性はFrank Philipse氏のデータベース(文献4)を主に利用
しました。各氏に対して深く感謝しますとともに敬意を表します。

1.出力段の設計
  最大出力は使用環境から2W前後も有れば十分であり、文献2から入手したRCA 6EM7の
 Ep-Ip特性図を元に差動型出力段のロードラインを音質重視で引き、
   ・Ip 35mA(1本あたり)
   ・Ep 200V(プレートカソード間)
 とした。この場合の最大出力は4.9W(負帰還なしの状態で)。

2.ドライーバ段の設計
  ドライバー段も同様に差動型出力段のロードラインを音質重視で引き、
   ・Ip  2mA(1本あたり)
   ・Ep 182V(プレートカソード間)
 とした。

3.全体設計
  電源部も含めEXCELで回路図を描き、抵抗やコンデンサーの値もExcelで求め
 た。

4.製作
  6CA7差動型アンプを元に改造した。
 主要な作業項目は次のとおり。
  ・定電流ダイオードは電流値をテスターで計り新たに選定
  ・出力段の定電流回路やカソード回路はそのまま利用
   ソケットや抵抗、コンデンサーなど殆どの部品を流用
  ・ドライバーに使用していた6BQ7Aは不要になり配線を撤去
  ・6CA7のGTソケットにつながっていた配線や抵抗やコンデンサーをはずして
   組み直し
  ・設計電圧の変更に伴い電源系の一部の抵抗を変更

5.外観等
 ケージを取り外した状態。

     写真1
 3本のミニチュア管はダミーでヒーターなどへの給電はなし。

 内部の様子。

     写真2

6.評価  
  カソードバイアスの値の設計値と実測値の違い
   出力段やドライバー段ともに特にカソードバイアス値の差異が目立つ。原因は公表さ
   れたと特性曲線と出荷された真空管の特性の差である。
   もう少し電流値の大きい定電流ダイオードに、出力段やドライバー段ともに交換した
   方が良さそうだが、五十歩百歩の感じがするのでこのままとする。
  音質、定位感(負帰還2db)
   6CA7の評価時と同様に、O社の半導体アンプと聞き比べてみると
    ・ボーカルの定位感がより明確
    ・高音域がクリアーに、極低音は同等の感じ
    ・2A3シングル・メインアンプで感じた透明度の足りなさも全く感じさせない。
  波形の比較
   後日実施(10項に記述)。
  総合評価
   引き締まった極低音、中高音域の透明感、深み、定位感、計測機器での結果など
   どの観点からも6CA7全段差動型PPアンプと同等以上の品質と判断しており、
   外観も良く満足度の高いアンプである。

7.おわりに
  低コストな6EM7によるアンプでも十分な音質を確保できたと実感できた。
 できるだけの多くの方の追試を期待します。

以下はRev2で追加
8.6EM7のメーカー統一
  GE製の6EM7がオークションで豊富に出ているがRCA製は少ないので、将来の
 保守性の良さに着目してGE製に統一した。
 音質に変化は感じず、動作電圧にも目だった差はない。

9.ダンピング・ファクター計算式の追加
  ダンピング・ファクターを計算で求めることとしExcelに追加した。
 計算結果の値は実測値とほぼ一致した。

10.波形の観察
  まず正弦波。
 (二現象の場合、CH1上側が初段グリッドでの波形、CH2下側がSP端子での波形)

10Hz

1,000Hz

5,000HZ

10,000Hz

50,000Hz

100,000Hz
  目で見る限りでは波形の歪みは極低音から極高音まで安定している。  周波数帯域は、極低音側は測定限界10Hzでも減衰がわずかであり、極高音側は半減  (−6dB)値がおよそ100,000Hzまで伸びている。  位相が周波数が高くなるほど遅れている。   次に方形波。

20Hz

40Hz

60HZ

1,000Hz

10,000Hz

50,000Hz
  周波数が低くなるほど、および高くなるほど波形がなまっている。  他のアンプと比べてみると、まず10Hzでは

本アンプ(6EM7差動型PP) 10Hz

2A3 シングル 10Hz

6CA7差動型PP 10HZ
  2A3シングルアンプと比べると良好であり、6CA7差動型PPアンプより素直で  あ。  ちなみに、本アンプは6CA7差動型PPアンプを改造して製作しており、真空管と動  作電圧の変更に伴う電源系統の抵抗などを除いて流用している。  (詳細は4項に記述)      次に10,000Hzでは

本アンプ(6EM7差動型PP) 10,000Hz

2A3 シングル 10,000Hz

6CA7差動型PP 10,000HZ
  6EM7が一番素直な波形に見える。  補足   測定は低周波発振器にLEADER LAG-120B(10〜1MHz)、オシロスコープにIWATSU SS-3510   (DC〜50MHz)を使用し、SP端子に8Ωの抵抗の入れてその両端で測定している。 11.   1〜2項でのロードラインと全体の設計結果はExcelを見て頂きたい。  ダンピング・ファクターの計算式を追加し、電圧測定結果も記入しなおしてある。 以下はRev3で追加 12.最大出力の計算    Excelでの最大出力の計算式に錯誤がありRev3で訂正した。 参考文献 1 木村  哲   ・「情熱の真空管アンプ '04/5/20 第2刷」(株)日本実業出版社発行 2 Frank Philipse   ・「Frank's Electron tube Pages 」http://www.tubedata.info/

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