6CA7全段差動プッシュプル・アンプ Ver.1.0 '05/05/03 Ver.1.1 '05/10/15 Ver.1.2 '06/07/27 Ver.1.3 '07/12/11 Ver.2.0 '08/03/28 All rights reserved JA3OOK 中村 利和 6CA7(EL34)3結による差動型プッシュプル・アンプを製作しました。ドライバー も6BQ7による差動型です。 設計と製作において、木村 哲 氏による「情熱の真空管アンプ」(文献1)および同氏の ホームページ(文献2)を大いに参考にしました。 真空管の規格特性は、木下順二 氏のホームページ(文献3)および Frank Philipse 氏 のデータベース(文献4)などを主に利用しました。 各氏に対して深く感謝しますとともに敬意を表します。 1.出力段の設計 期待する最大出力は私の使用環境から3〜5Wも有れば十分であり、回路設計も最新の 技術を取り入れて差動型プッシュプル・アンプとした。 出力管は6CA7と決め、文献1による差動型出力段のロードラインの考え方を基本とし、 EP-Ip特性は文献3の記事中の図(6CA7の3結特性を求めて MJ 1994.1 所収)を基に 検討の結果、出力管の動作基点を、 ・Ip 35mA ・Ep 220V とした。この場合の最大出力は4.9W(負帰還なしで)。 2.全体の利得配分と初段の選定 文献1の真空管データ一覧から6CA7の3結におけるμとrpおよび使用する出力トラ ンスの負荷抵抗から出力段の電圧利得を8Ω出力において約0.22倍と推定した。 最大出力時の8Ω負荷における電圧は6.3Vであり、アンプ初段(位相反転とドライブ) への最大入力電圧を1Vとすると、初段に必要な利得xは、 1V×x×0.22=6.3V x=6.3V/0.22=27(倍) となる。 このときのアンプ全体の利得は 27×0.22=5.9倍である。負帰還も懸けたいので少なす ぎる気もするが、まずはこれで製作し、音が小さすぎれば対策を立てることとする。 初段の真空管を選ぶに当たって、 ・μ(増幅率)が30強の3極管 ・Ep-Ip特性の直線性が良いこと ・rp(内部抵抗)が低いこと を条件に目に留まった6BQ7Aに着目し、文献4で特性を確認し決定した。 3.設計 設計値の計算はExcelで行い、回路図も同様にExcelで描いた。 4.製作 LUXKITのA3500のシャーシーを購入し活用した。購入時点ではトランス類(出力と電源) だけが取り外された状態であり、その他の部品や配線は付いたまま譲って頂いた。 従って板金工作は新規に購入したタンゴのトランス(出力と電源)を取り付けるのにド リルで穴を開けたこととボリュームの穴をリーマで広げただけであり、工作は非常に楽で あった。 配線は全て今回の設計に合わせてやり直しし、プリント基板も全てのCRを取り外し銅 箔の一部もはがして設計した回路図に合わせた。 SW類やコネクタ類などはそのまま使用でき非常に楽に製作ができた。中古のシャシー の活用は非常に生産性が上がり今後も実施したい。 5.負帰還2dbでの結果 音質、音感 O社の半導体アンプと聞き比べて ・ボーカルの定位感が一層明確 ・中高音域は同等、低音は引き締まった感じを受ける ダンピングファクター ・左右ともに 3.0(ON/OFF法) 総電圧利得 ・左 5.3 ・右 6.3 差がありすぎ。真空管が中古のせいと思われ今後検討予定。 音量 ・CDプレーヤーからのダイレクト入力で、 普通に聞くには12時の位置前後で十分 (これでも家族からは大きすぎると言われる) ハム音 ・全く聞き取れない 発熱 ・当然かなりの熱 (ヒータだけで計算上43W!) 6.今後の課題 ・利得の差を少なくしたい ・負帰還量をもう少し多くしたい ・クロス中和の実施 測定結果(2005/10/15追加) 7.外観等 外観はA3500のオリジナルと大差ない。 写真1 A3500のシャシーを利用 ケージを取り外した状態。 写真2 斜め上から 内部の様子。 写真3 電源以外のコンデンサーや抵抗は新品、元のプリント基板は活用 8.設計結果 Excelを見て頂きたい。Excelはここ。 なお、最大出力の計算式の錯誤(回路図の訂正は必要なし)は訂正した。 9.おわりに 本アンプで差動型アンプの音質での優位性を実感できた。今後、別の真空管を使用し た差動型アンプや古典管によるシングルアンプを作り、本アンプと比較していきたい。 参考文献 1 木村 哲 ・「情熱の真空管アンプ '04/5/20 第2刷」(株)日本実業出版社発行 2 木村 哲 ・ 「情熱の真空管」 http://www.op316.com/tubes/tubes.htm 3 木下 順二 ・「真空管アンプ情報」http://www.asahi-net.or.jp/~UP2J-KNST/tube.htm 「6CA7の3結特性を求めて」 http://www.asahi-net.or.jp/~UP2J-KNST/tube/tb-s1.htm 4 Frank Philipse ・「Frank's Electron tube Pages 」http://www.tubedata.info/