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PW1のトラブルとフィルタの取扱い
スローパーアンテナを使用している場合に IC-PW1 が「PAユニットのバランスくずれ問題」の
症状を出し始めました。「ドライブと出力が比例しない問題」も出始め、フィルターの入れる箇
所や保安アースのとり方を工夫することにより解決しました。
これらの問題や対策は当局だけのことかもしれませんが記載します。
(ここでいう保安アースとは感電防止アースのことです。より良いアンテナアースについては
ここを見てください)
「PAユニットのバランスくずれ問題」が発生してからしばらくここに書いた処置でだまし
だまし使用してきましたが、PAユニット自体の別の致命的故障で修理に出しました。
PAユニットを交換したので、バランスくずれ問題も当然なくなり、ここに書いた対策に一般性が
あるか分からなくなりました。記事の削除も考えたのですが、移動し保存しました。
Ver.1.0 '19/12/12
All rights reserved JA3OOK 中村 利和
目次
1.当局の設備の概略
2.PW1 PAユニットのバランスくずれ問題
3.対策
1.当局の設備の概略
・KENWOOD TS-590SG + ICOM PW1
・アンテナ 15m高の自立タワー
160m〜40mバンドはスローパー 20mバンド以上は八木(またはダイポール)
2.PW1 PAユニットのバランスくずれ問題
状況によって変わるが、出力500W前後を超えた運用をすると、PW1の表示パネルの
AMP/PROTECTスイッチが“OFF”になり、その上のLEDが赤色に点灯し、AUTOが点滅し、
リニアアンプがスルーになる現象。
これは取説によると
「PAユニット×4ユニット間のパワーバランスがくずれた」
ことを示します。
発生状況を観察すると、
1 160mバンドなどのスローパーが発生しやすい。
2 なおかつ、FT8で発生しやすい。
3 なおかつ、パワーを大きくするほど発生しやすい。
4 八木では大パワーでも稀にしか発生しない。
5 リグへの高周波の回り込みによる発振などの自覚症状はない。
ようです。
リグやアンテナやアース関係の作業記録を読み返してみると、保安アース線をチョークコイル
経由でPW1の筐体接地端子に接続した頃から発生している。チョークのインダクタンスの大小に
大小によって問題が出るパワーが変わる。
この状況から、PW1そのものは壊れていなくて、接地型アンテナの場合に保安アースに流れる
高周波電流が大きいほどPW1筐体の電位が不安定になり「パワーバランスくずれ」を誤って検出
しているのではないかと疑い始め、試行錯誤して次の対策に落ち着きました。
3.対策
対策の要点は、
1 保安アース線はPW1の筐体接地端子に直結する(チョークコイルを入れない)。
2 保安用アースはタワーアース(アンテナ用アース)から独立させる。
3 PW1のアンテナ端子にコモンモードフィルターを入れアンテナに接続する。
4 PW1の筐体接地端子と590の筐体接地端子を接続する線にチョークコイルを入れる。
5 PW1と590を接続する同軸ケーブルにはフィルターを入れない。
6 コモンモードやノーマルモード電流を阻止すべき要所要所にフィルターを入れるなどの
対策を行う。
です。
上記の 1 〜 5 はフィルターなどを入れるべき/入れてはいけない箇所を1年以上にわたっ
て試行錯誤し、現時点での最良の対策をまとめたものです。
★ 何らかの状況が変われば最良の対策が変わるかもしれません。
6 はリグを購入したり新しい周辺機器を追加したりするたびに実施してきており、目新しいも
のではありません。当たり前のことが多いと思いますが念のため書いておきます。
上記の 1 〜 6 保安アースとフィルターの場所を模式図で示します。
図-1 保安アースとフィルターの場所の全体模式図
補足説明します。
a トロイダル・コア活用百科(参考資料1)のバランとハイブリッドの章に
「保安アースと送信機接地端子の間にインピーダンスがあると
送信機が高周波電位を持ち、感電やTVIなどを引き起こす」
ことがちゃんと書かれています。 何回も読み込んだ本ですが忘れていました (-_-;)
従って、
・保安アース線はPW1の筐体接地端子に直結する。
・PW1のアンテナ端子にコモンモードフィルターを入れアンテナに接続する。
このフィルターは「フロート・バラン(ソータ・バラン)」として動作します。
あとは応用で、
・保安アース線とアンテナアース線は絶対に接続してはいけないし、保安アースとアンテナ
アースを埋める場所はなるべく離す。(フロート・バランの働きが万全ではないから)
・保安アースは感電防止が目的なので接地抵抗は高めでOKです。
★アンテナアースは放射抵抗を小さくする必要があるので、なるべく地中深く、多くの場所
にアース棒を打ちこむ。
b TS-590とPW1を接続する同軸ケーブルはコアにを通さない。もしコアーに通すと、ドライブ出
力を上げてもPW1からの出力が比例しない現象が出る(場合がある)。
c 高い電圧が誘起されるおそれがある電力線や信号線にはチョークコイルやコモンモードフィ
ルターを入れる。
d ルーターとPCは無線LANで繋ぐ。やむなく両系統をメタル線で繋ぐ場所にはフォットカプラ
ーやリレーを介し、コモン/ノーマルモード電流が流れない構造にする。
これは、ネットワーク系を守っておけば、PCや無線機系が誤動作してもPC再起動などの復旧
作業を遠隔操作で行える余地を残しておきたいからです。
e フィルターの作り方
コモンモード電流阻止用フィルタ
・同軸ケーブルや信号線をトロイダルコアに10回程度通す。
・パッチンコアで挟んだり、それに通してもいい。
AC100V用ラインフィルター
・AC100Vで使用するので電流だけでなく耐圧も重要。自作するより市販品を購入する。
自作する場合はACコードを大きいサイズのトロイダルコアに通す。
チョークコイル
・トロイダルコアや棒状フェライトコアに線材を巻く。
超小型が必要な場合は市販品を買った方が楽です。
コアーについて。
トロイダルコア
・今回の目的では比透磁率1,000程度(#43など)のコアーを使用する。
・サイズは単線や信号線用には FT-114 、5D-2V用には FT-240 が良いかも。実際に巻
く線材の太さと予算で決める。
パッチンコア
・比透磁率が公開されていないので、使用する同軸や線材の太さに合ったサイズで決める
ことになる。
巻き数や使用する個数が重要ですが無線設備の状況によるので一概に言えません。私の場合
も今後の設備状況変化に合わせて試行錯誤していくことになると思います。
トロイダル・コア活用百科 にトロイダルコアを使ったフィルターについて詳しく書かれて
います。 今回のテーマについては 5.5章 ライン・フィルター と 6.1章 バランの役割り
が大変役に立ちます。
[参考資料]
1 トロイダル・コア活用百科 山村 英穂
第11版 1991年2月20日 CQ出版社発行
2 ICOM IC-PW1 取扱説明書
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