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1kW免許取得までの記録                       TS-590SからTS-590SGに変更 Ver.2.0 '18/01/26                                    Ver.1.1 '13/10/03                                    Ver.1.0 '13/09/03                           All rights reserved JA3OOK 中村 利和   今回、1kWアマチュア無線局の検査を受け無事に合格することができました。準備から合格  までの作業を私自身のために記録しておきます。そしてこの記録が1kW局を目指す方々に役立  つならさらに嬉しいことです。 1.既に受けている免許   次の2種類の免許を既に持っている。    ・50W移動局(今回の場所が常置場所)    ・1kW固定局(今回の場所とは別の場所だが同じ近畿総通の管轄区域、設備共用) 2.タワーとアンテナの選定   別の場所で1kW免許を受けた当時と今回との大きな違いは、電波法施行規則 第二十一条の三  で「電波の強度に対する安全施設」 (平成11年10月1日施行)が定められたことである。  (参考資料1、2)  ここで定められている条件をクリアできるタワーとアンテナでなければならない。   まず、アンテナから検討着手。各社のアンテナを比較検討し候補をしぼり、CD社の八木アンテ  ナとした。CD社へ目的をWebで連絡し候補に上げている八木の俯角減衰算出用の水平面/垂直面放  射パターン図のpdfを送ってもらった。  受け取ったパターン図を元に検討して必要な地上高を求め、予算とも相談の上でアンテナとタワ  ーを決定した。  その経緯とタワーの建設はKT15C(CD社KT-Cシリーズ)建設記録にまとめてある。 3.100W固定局の開局   初めに100W固定局の免許を得て、次に1kWに変更する手順で行うこととした。この手順は費用  を安く1kW局の免許を得る常套手段であり、誰もが知っていること。   使用する機種はKENWOOD TS−590S。  紙で申請するより電子申請のほうが安くなるので電子申請Liteで申請し免許を受けた。  手順と所要日数は次のとおりであった。   ・電子申請lite用ID取得のための手続きをWebで行い、IDが書かれた葉書を受け取るまで7日    間   ・電子申請liteで100W局の開局申請を行い、免許状が到着するまで10日間   ・申請内容の補足     1kW申請時に親機となる100Wの上記機種(技術基準適合機種)で申請     (もし、1kWへの変更検査のときに親機も変更すると親機も検査対象となり、検査手数料      が余計に必要になる)     RTTYなどオプションの電波形式はこの時点では申請していない     (系統図が必要になり電子申請では手続きが複雑になりそうなのでしなかった)   固定局を既に持っているので、固定局2ヶ所での免許は許可されないかもしれず気にしていた  が、すんなりと免許された。 4.リニアアンプの選定   安心して検査に合格するにはRTTY等連続キャリアーでも出力1kWが確保でき、スプリアスが少  なく安定して動作するアンプが必要である。複数の候補の中から某メーカー製のアンプを入手し  た。ICOM IC−PW1である。 5.申請書類の作成   申請書類を作成しながら合間を見て近畿総通へ出向き、常々考えていた疑問をぶつけてみた。   ・検査時にアンテナは各バンド必ず必要か?     必ず必要。無いと200W超は許可できない。アンテナが無いバンドでも既得の100W     免許は有効で、出力表記がバンド毎に異なる免許状を交付する。   ・1KWと500Wで検査項目が変わるか?     同じ。     TVI、テレホンIなどの近隣調査範囲も変わらず、半径50m以内が基準。   ・近隣からの同意書の様式は?     同意書は不要。     試験電波の発射予告を近隣へ文書で配布し調査すること。      半径50m以内が基準だが50m以上も必要に応じて実施すること。      近隣への通知文書の写しと調査結果を総通へ報告してもらう。   ・親機が技術基準適合機種でも親機内部の系統図は必要か?     適合機種でも系統図があるなら添付すること。     リニアアンプにもあるなら添付すること。   ・その他アドバイス     系統図のアンテナ表記      実際のアンテナに合わせて、同じ数のアンテナを表現すること。     AC電源      1KWの場合、AC電源が100Vだと電圧降下の影響で発振したり周波数がずれるなどの      実例があるので注意すること。     TVI      CATVでもケーブル側のアンプが悪さすることがあるので安心してはいけない。      地上波デジタルはアナログ地上波に比べて問題は減った。   このように、親切で丁寧に相談に乗っていただくことができ疑問が解消し安心したが、アンテナ  を全バンド用意する必要があることがはっきりし気が重くなった。  準備した申請書類は次のとおり。   所定の様式    ○アマチュア局の無線設備等の変更申請(届)書      要点は       ・リニアアンプの付加、それに伴う空中線電力の変更       ・付属装置(RTTY、PSK31)を付設、それに伴う電波形式の変更    ○無線局事項書及び工事設計書      要点は上と同じ。      系統図にはリニアアンプ、RTTY通信付属装置とPSK31通信付属装置、各バンド      毎のアンテナを明記した。親機とリニアアンプの系統図も添付した。   自由様式    ○電波防護のための基準への適合確認      電波防護の資料(参考資料の1、2)を良く読み電界強度を試算してみて、電波防護基      準の限界値に一番近くなる28メガと21メガについて、電界強度の計算図面を作成し      た。次の図は28メガの図面。       28メガ垂直面電界パターン図      計算図面はExcelを使用し、アンテナメーカーから送ってもらったpdfの垂直面放射パタ      ーンをコピー・ペースト、電界強度の計算に必要な計算式を全て埋め込んであり、      次のパラメータを入力すると即座に水平方向距離ごとの電界強度が計算される。         供給電力、平均電力率、同軸ケーブル損失、同軸ケーブル長、アンテナ絶対利得、         見下ろし角ごとの減衰量      (28と21メガ以外の電界強度は各バンドごとに定められている防護基準限界値より       かなり小さくなるのは明白なので計算資料を作成しなかったが、後に全バンドについ       て提出を命じられることになった)    ○同軸ケーブル減衰量のグラフ       フジクラのWeb資料から28と21メガを推定し作成した。       同軸 減衰量 6.追加資料の作成   前項の申請書類を発送して28日後に総通から電話があった。次の資料を追加しなさいとのと  こと。    ・50メガで1kW免許が必要な理由    ・28/21メガ以外にも電波防護基準に適合していることの計算書が必要    ・返信用封筒が必要(変更許可通知書の受け取り用)   そこで次の書類を作成し郵送した。    ○アンテナ架設概要図      アンテナの高さと形式が分かる模式図    ○電波防護のための基準への適合確認(計算式と計算結果の表)      28/21以外の八木アンテナについては28八木と同じ要領で作成した。      ダイポールやスローパーについては絶対利得は2.15dBi(注1)とし、各バンドごとに      アンテナエレメントから隣地境界上2mまでの最短距離(注2)を実測し電界強度を計算      した。(これもExcelを使用)       各バンド電界強度計算表      供給電力や平均電力率などの入力パラメーターは八木と同じ要領。       注1 スローパーの絶対利得についての資料が見つからず、ダイポールより利得は少          ないことは確実なので、安全の観点からダイポール2.15dBiと同じとした。       注2 エレメントの垂れ下がりやエレメントの引き回しの現状を調べて、エレメント          から隣地境界上2mポイントが一番接近する直線距離。    ○同軸ケーブル減衰量のグラフ       提出済み資料に不足バンドを追加し更新    ○切手を貼った返信用封筒 7.全バンドのアンテナの準備   アンテナの架設と調整は総通とのやりとりの前から並行して進めていた。  アンテナの数は1.9から50メガまで11バンドに対応する10個のアンテナ(3,5と3.8メガは調整  で共用)を、八木系はローカル各局の協力を得て、ワイヤー系はコツコツと頑張って架設した。   エレメントの地上高や引き回す位置などは電波防護のための基準および電波法施行規則(高圧  電気に対する安全施設、2.5mルール)に基づいて架設したが、これらの条件を満たした上でSWR  を下げることはローバンドになるほど大変な作業であった。   総通へ回答が必要となる空中線系の接地は、タワーから引き込んだアース線(避雷用接地線)  に同軸ケーブルコネクターの芯線と外皮の両方を接続した。  リグはアース線を地中に埋設し引き込んだ保安用接地線に接続し、避雷用接地線と使い分けてい  る。   リグを落雷や誘雷から守るため、不在時や雷の時は同軸を抜いて上記のとおり接地し、電源コ  ンセントも抜いている。 8.試験電波の発射   追加資料を発送して7日後に、変更許可通知書と調査用紙(出力とSWRの実測値、保有する  測定装置、電波障害の有無、周辺見取図、行きかた地図などA4用紙で3ページ)が到着した。  変更許可通知書に落成期限が書かれていず、おまかせとの趣旨だろうが、こちらとしては1日で  も早く検査を受けたい。   変更許可を得たので試験電波でのテストを開始した。SWRが下がりきっていないバンドはアン  テナの再調整が必要であった。自宅のテレビやインターフォンなどに障害がないか調査したが、  問題なし。   近隣へ電波障害調査を二回、二日に分けて行うこととし、文書を作成して配布した。配布先は  半径50m前後の範囲内の8軒。どの家にも常々から顔を売っていたので気軽に趣旨を理解して  もらえた。  なお、この近辺は地上波デジタルの電波は届いていず、全てCATVで視聴している。衛星放送  は必要に応じ戸別に受信している。   電波の発射は全バンドを4〜10分ごとに切り替えながら、八木系は全方位で特に近隣住宅方  向に重点的にビームを向けながら実施した。電波発射時間は1回当たり1時間。  二日目の終了後に結果を聞きに回ったが異状の報告はなく、今後も何かあれば連絡を頂けるよう  にお願いしておいた。   落成届を作成し調査用紙への記入をしていった。    ○無線設備(変更)工事落成届      指定様式は決まっていないようなので変更申請(届)書などを参考に自分で様式を工夫      し作成した。      主要項目は、工事落成年月日、無線局の種別、免許の番号、識別信号、検査手数料額、      添付書類の名称。      これに検査手数料額11,650円の収入印紙を貼付。    ○添付書類として調査用紙      ☆アマチュア局検査予備データ        ・各バンドの出力(指定周波数毎にバード電力計とダミーアンテナで測定)        ・各バンドのSWR(実際に運用する周波数とアンテナで測定)        ・周波数偏差の欄は「WWVで校正可能」と記入        ・空中線系の接地装置は前項の処置をしているので「有り」      ☆電波障害の有無、対策        上記の調査結果なので「なし」と記入      ☆自局にある測定器         (周波数カウンターがなく心配したが検査でも質問や指摘なし)      ☆周辺見取図        半径80m程の道路、建物とその種類、電波障害調査を行った家を明示      ☆行きかた地図        最寄りの駅から自宅までの道順の概略地図及び大阪からの所要概略時間        車で行くとのことなので高速道路も含めて記入   これらを変更許可通知書がきて22日目に工事落成届と記入済み調査用紙を簡易書留で郵送。 9.落成検査   総通から音沙汰がないので郵送後14日目に電話し1日でも早い検査を希望。書類審査中なの  で、こちらから連絡するとのこと。  郵送後28日目に総通から検査予定日の電話での打診があり、もちろんOKと回答。   落成届の郵送から56日目、いよいよ検査の日を迎えた。朝から最終の試験電波を発射し異状  がないことを確認。暑い日なので冷たいお茶を用意しながら待機。   検査官が2人と運転手1人、計3人で来られ、バード製電力計とポータブル電界強度計を持参  された。  調査と検査の項目は次のとおり。   ・設備(親機、リニア、アンテナ)の概要説明   ・電波障害調査のために近隣へ配った文書の写し、      および、その時の電波発射計画メモの写しを提出   ・全バンドの指定周波数での出力を総通持参の電力計で測定(ダミーはこちらで用意)   ・検査官一人が敷地境界まで出て全バンドの電界強度を測定     3.8メガは固有のアンテナがなく、10分ほど待ってもらって3.5メガのアンテナを     調整しなおして測定しOK   これら全ての検査項目をクリア。TVIにはくれぐれも注意するようにと念を押されたうえで、  指示事項なしで合格と書かれた無線局検査結果通知書と新しい免許状を受け取った。   1kWへの変更申請書を郵送したのが2013年3月22日、検査に合格したのが7月17日で、  約4ヶ月、アンテナやタワーの検討から数えれば約12ヶ月の道のりであった。 10 トランシーバーの変更に伴う変更申請(2018/01記入)   トランシーバーを TS-590SからTS-590SG に変更するために次の要領でTS-590SGでの免許を取得  しました。     免許済みのTS-590SとTS-590SGを入れ替える変更申請、またはTS-590SGを増設し同時にPW1に接  続する変更申請だと無線設備検査が必要になるが、まずリニアを接続しないで増設だけ行い、  次にリニアにつなぐ2段階の変更申請をすると検査が要らないとの趣旨のアドバイスを近畿総通  から頂きました。   それに従って、まずTS-590SGをPW1に接続しないで増設するだけの変更申請を行い免許を得て、  次に、TS-590SGをPW1につなぐ変更申請する(この時590SGでのRTTYやFT8、遠隔操作、TS-590Sの  撤去も記入しておく)ことにより検査なしに免許されました。 参考資料 1 総務省  電波防護のための基準への適合確認の手引き   2 JARL 電波防護指針 JARL電磁環境委員会 3 クリエート・デザイン株式会社アマチュア無線用機器 4 株式会社フジクラ ポリエチレン絶縁高周波同軸ケーブル(D型ケーブル、C型ケーブル)

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