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デュアルバンド 18,21 2エレ デルタ・ループ アンテナ
Ver.1.0 '02/06/30
JA3OOK
デルタ・ループアンテナのデュアルバンド化を行いました。その設計から建設、調整の詳細を
報告します。
1.設置場所 自宅のベランダからのルーフタワー(写真1)
写真1 18、21メガ デュアルバンド 2エレ デルタ・ループ アンテナ
(中央のGPは14メガ用)
2.工事日 2001年11月〜2002年 3月
3.建設動機 18メガバンド2エレデルタ・ループを上げて2ケ月ほど使ったが、シングル
バンドではおもしろさが半減し、なんとか他のバンドにも出たくなった。
この18メガのデルタ・ループの設計と製作の過程で
エレメントの形は正三角形でなくかなりいい加減でも機能することは実証されており、
デルタ・ループアンテナの2バンド化を決意。
SWRの調整で給電点周辺に手が届く必要があり給電点を余り高くできないこと、太陽黒点
サイクルが下降方向であり今後は28より21メガバンドが主力になって行くことから、
18と21メガのデュアルバンド化に決定。
(以下、18メガバンド2エレデルタ・ループを先代デルタ・ループと記述する)
4.デュアルバンド化の方法
@21と18はエレメントの途中にリレーを入れて切り替える。
Aリレーを入れる位置は斜めのエレメントの下から1/3くらいの位置とし、
MMPCで最終的に決定する。
MMPCは先代デルタ・ループの設計でも大活躍したアンテナ解析プログラム(参考文献4)。
5.設計製作条件と実現方式
(1)最大回転半径 2.5m できれば 2.3m以内
→先代デルタ・ループアンテナの基本仕様をそのまま踏襲。
ブーム長も同様とする。
(2)災害に強いこと
・風に強いこと
・壊れても建物などの2次災害を起こさないこと
→風圧面積を小さくする。
軽い材料を使う。
→グラスファイバーの釣り竿は軽くしかも先端ほど細いので、軽くでき
しかも地上高が高いほど細く風圧を最小限にできる。
(ここらも先代デルタ・ループと同じ)
(3)製作費をかけないこと
→手持ちの材料を有効利用する。
主要な手持ち材料
グラスファイバー釣り竿 4.2m 2本
4.2m 2本
(竿のさっきちょの細い部分(穂先)を30cmほどカット済みの長さ、
穂先はしなやか過ぎてエレメントが垂れすぎるの使わない)
先代デルタ・ループと同じ材料を流用。
ただし、4本の釣り竿の長さは同一にカット。
6.製作の手順
(1)だいたいの形は上記の材料で決まってくるが、釣り竿などを組み立てて実際に作った上で
実測し、それを元にエレメント長やリレーを入れる位置などはMMPCで計算し決定する。
@手持ちのパーツをチェックし、不足分を購入
・同軸ケーブル 5D2V(給電用 所用長 および 60cmほどの余り)
・M型接栓 オス 2個(同軸ケーブル両端)
メス 1個(給電点に使用)
・6mm銅パイプ(内径 5mm) 0.7m
(ガンママッチのC用−−−中に5D2Vの網線をはがして挿入してCを形成)
・裸銅線 1mm径 20mほど
・フェライト・トロイダル・コア アミドン製 FT−114−61 4個
μs=100程度のもので平行ビニール線を12回程度巻ければ
なんでも良い
・ステンのボルトナット 5mm径× 50mm 2本
(アルミアングルで形成する扇の要の位置に使用)
・シリコーン系充てん材(セメダイン社製バスコーク)
・ビニールテープ、自己融着テープ、布製ガムテープ、テレビアンテナ用ステー線、
など
A新規購入
・リレー 1回路2接点 4個 日本橋 デジットで購入
・小型陸軍ターミナル 12個 同上
・平行ビニール線 20m リレー制御用に使用
B給電点の工作
・百聞は一見にしかず。写真2を見てください。
写真2 給電アッセンブリ パイプは6mm銅管
完成後、シリコンで防水。
Cリレーボックスの製作
・これも写真3を見てください。
写真3 リレーボックス
・3種類の色の陸軍ターミナルを用意して、色で配線が混乱しないようにする。
配線と色をメモっておくと安心。
Dアルミと釣り竿の工作は先代と同じ(ほとんど流用)
作り方の要点はを再掲すると、
・釣り竿をのばし継ぎ目をビニールテープと自己融着テープで固定。
・アルミL型アングルの端に穴をあけ、2本をステンのボルトとナットで止める。
これは写真4。
写真4はタワーに架設した後の写真であり、エレメントを添わせている水平の釣り竿
の廃材やマッチング部品などは架設後に取り付ける。
写真4 アルミL型アングルと給電部分(ガンママッチ)
・アルミL型アングルと釣り竿を、継ぎしろ(重ね合わせ)0.5mでガムテープ
とステー線でくくる。
・全長5.73m2本の2セットが出来た。
E1.2mm銅線を、釣り竿に沿わせテープ止め、アルミL型アングル部分は留めないで
遊ばせる。(これもほとんど流用)
あらかじめ銅線は少し余裕を持たせた長さで切り、片方を柱かなにかに結び、他方を
ペンチてつまんで引っ張って引き延ばしておく。これにより真っ直ぐになりなおかつ
少々の引っ張りではこれ以上伸びなくなる。0.65mmの銅線も同様。
FV字型の釣り竿先端どうしを長さ4.6mになるように0.65mm銅線でつなぐ。
・回転半径を広くとれるなら間隔はもっと長いほうがベター)
・風による揺れの繰り返しで線が切れるのを防ぐため、アンテナエレメントの釣り竿
先端の逆L字型部分は、5D2Vの外皮の網線6cmほどを入れて曲げ応力を高める。
G上記要領でRa、Ref両方を工作し、骨格を組み立てる。
サブブームをアルミL型アングルの最先端より少し低めにUボルトとステー線で止める。
サブブームの高さは扇の要の位置のボルトから1.28mとなった。
H釣り竿先端までの長さ、先端の間隔などの要所要所の長さを巻き尺できっちりと測定し
メモっておく。
これはMMPCで計算し直すための非常に重要な入力データとなる。
なお、MMPCへ入力するデータはX、Y、Zの座標系で入力するので、
高さ、幅をが重要であるが、釣り竿の長さなど斜めの要素も計っておくこと。
(2)上記Hで採取した実寸データをMMPCに入力し、逆三角形下側の形を決定する
@要点
・ゲインとFB比の最高点は一致しない。どこに目標を置くかは個人の好み。
・RaとRefの間隔もパラメータの一つ。 回転範囲の制約もあるし1.6mに決定。
・図1が最終のイメージ図。
図1 最終イメージ図(MMPCによる)
・放射パターンは図2と図3。
図2 18.1MHz放射パターン(MMPCによる)
図3 21.15MHz放射パターン(MMPCによる)
・寸法は図4の通り。
図4 設計寸法
(3)形が決まったのでエレメント長などを最終チェックする。
@リレーボックスをMMPCによる設計位置にビニールテープでしっかり取り付け、
配線する。
リレーボックスから下側は裸銅線とし、リレーボックス側だけ接続しておく。
Aリレーへの給電線も取り付け。
リレーから1mくらいの所に、トロイダルコアーへ11〜12位巻き込み(写真5)、
高周波が乗るのを遮断しておく。(詳細は文献3の37ページ)
写真5 リレーへの給電線へ入れたトロイダルコア
B銅線の長さやエレメント間隔を実測し最終確認。
(4)タワーのマストに上下のブームを取り付ける。
@RaとRefをタワー上にロープを使って持ち上げて、上下のブームに取り付ける。
RaとRef共に軽量(各5.5Kgぐらい)で楽々作業できる。
B下側で遊んでいるエレメントを設計値通りになるように張る。
そのために、
18メガの一番下の水平横部分は廃材の釣り竿のファイバーを利用しアルミL型アングル
に針金でしばり、エレメントをビニールテープで仮止め。
21メガはエレメントの銅線で釣る形にする。
18、21いずれも、輻射器(Ra)は給電点の外皮部分から、反射器(Ref)は下方エレメ
ントの中心から銅線でブームにアースする。これでエレメントはアースされ落雷避けとなる。
(ブームはマスト、タワーを経由してしっかり地中に接地すること)
(5)同軸をつなぎSWRを調整する。
@SWRメータはシャックの送信機に入れて、メータは外付けを自作し、アンテナとの
マッチング部分まで線で延長し、送信操作もリモートで行ってSWR値が手元で見える
ようにする。
こうしなければとても一人では調整できない。
Aマッチングはガンママッチを採用。
Cは銅パ安堵イプの中に5D2Vの心線(網線をはがしたもの)を差し込むことで形成。
このことは文献1を参考。
銅パイプの長さは70cm(18メガまたは30cm(21メガ)くらい。
調整時不足する場合は5D2Vをつなぎカットアンドトライする。
ガンママッチのCに相当する5D2Vの心線からLに相当する銅線をのばし、エレメント
への接続箇所を探って半田付け。
Bパターンやゲインの調整はエレメントの長さで行う。エレメント長の調整は18、21
それぞれの一番下側の銅線でワンターンコイルを作りディップメータで測定しながら、
長さを調整する。21メガのエレメントも設計値より短くなった。
CSWRの落とし込みはガンママッチのCとLで行う。
決してエレメントの長さ調整で行っては駄目。
1.4まで落ちた。これぐらいでとりあえず十分。日数をかけてじっくりと
取り組むつもり。
(6)最終作業として、テープなどでの仮止めを本止めにし、M型接栓メスや銅パイプの水が
浸入しそうな所はシリコーン系充てん材を厚く塗る。
7.使用実感、反省点など
(1)さて、一番気になる性能だが、まずFB比やサイドのキレはMMPCで計算されたのと
同じ感じ。
18メガはS9がバックで7ぐらい、S3ぐらいの弱い局はかすかしか聞こえなくなる。
21メガはS9がバックでS5くらいで、非常に気分が良く精神衛生に良い。
ゲインはこればっかしは分からない。
(2)エレメント長が設計値より短い。サブブームなどの影響が考えられるが未解明。
(3)釣り竿だから少しの風でゆらいでいる。風に対する強さですが、近くの竹藪の孟宗竹が
倒れたが大丈夫だった。
最上部のエレメントの太さが0.65mmで、これが一番の弱点になるような気がする。
(4)マストに添わせて14メガのGPを上げているが相互に目立った影響は出ていない。
8.CQ誌への掲載
この18、21メガ デュアルバンド 2エレ デルタ・ループ アンテナは『CQ出版社』
から発行されているCQ誌2002年6月号のTechnical section(103〜107ページ)に
掲載されました。
9.CQ誌への掲載
このアンテナ、2005/10頃に撤去。理由はリレーケースの経年劣化による割れ、それによるリレーの接点不良。
参考文献
1 『キュビカル・クワッド』JA1AEA 鈴木 肇 CQ出版社 昭和58年10月15日 第12版
2 『MMPC』 JA1WXB
3.『トロイダル・コア活用百科』 山村英穂 著 CQ出版社 1991年2月20日発行 第11版