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18メガ 2エレ デルタ・ループ アンテナ Ver.1.1 '01/10/19
Ver.1.2 '02/06/30
Ver.1.3 '03/01/02
JA3OOK
1.設置場所 自宅の二階のベランダからのルーフタワー 給電点の地上高約7m
2.工事日 2001年8月〜9月
3.建設動機 引越しを決めたが屋根の傾斜がきついことと今度は終の棲家でありルーフタワーは
屋根の損傷が心配。もちろん庭が狭くて本格的タワーは不可能。
2階のベランダからのルーフタワーで我慢するとしてもビームアンテナが欲しい。
隣家との境界が狭くて八木は回転半径が大きく不可能、回転半径が小さいビームアンテナが
欲しい。
キュビカル・クワッドも良いが下側エレメントが屋根に接近するのでイマイチ。
ぴったりのアンテナがあった、デルタ・ループだ。
これしかない、これに決定。(参考文献1の122ページ「デルタ・ループ」)
次にバンドだが21メガは昔からやっていてこの機会に新しいバンドに出てもよいなあと
思っている時に、2エリアの友人が18メガのファンであり電子メールのやりとりで触発され
18メガにトライしよう。
6月に引越しし、一段落したころから具体的構想を練り始めた。
デルタ・ループについて:
参考文献1によると、このアンテナはK8ANVが考案し28MHzで風圧の実験もやってる
とのこと。特許も申請した由。
4.設計製作条件と実現方式
(1)最大回転半径 2.5m できれば 2.3m以内
→デルタループアンテナを採用。
ブーム長も最低限の長さにする。
(2)災害に強いこと
・風に強いこと
・壊れても建物などの2次災害を起こさないこと
→風圧面積を小さくする。
軽い材料を使う。
→グラスファイバーの釣り竿は軽くしかも先端ほど細いので、
軽くできしかも地上高が高いほど細く風圧を最小限にできる。
(3)製作費をかけないこと
→手持ちの材料を有効利用する。
主要な手持ち材料
グラスファイバー釣り竿 4.3m 2本
4.2m 2本
(竿のさっきちょの細い部分(穂先)を30cmほどカット済みの長さ、
穂先はしなやか過ぎてエレメントが垂れすぎるの使わない)
5.設計手順
(1)デルタ・ループの基本骨格である逆三角形の2辺の斜辺に手持ちの釣り竿を使用する。
概算、トップの水平部分長を回転半径から4.6m、斜辺長を各4.2mとすると、
全周が13.0mとなる。
目標である18.1MHzの波長λは
λ=300/18.1=16.57m
キュビカル・クワッドやデルタ・ループの場合1周長は2%程長くなる。(参考文献1の
42ページ、122ページ)
従って 1周は16.9mぐらい。従って、斜辺が各1.95mずつ不足。
(2)さあ、どうするか!
@2辺を出来るだけ延長することは当然。
アルミパイプか何かで延長しても、強度の面でせいぜい1.5m程度だが延長する。
A16.9m−4.6m−5.7m×2=0.9m 0.9mまだ不足。
ローディングコイルを入れる方式やヘアピンを入れる方式のキュビカル・クワッドも
確かに報告されている(参考文献1の50ページ、95ページ)。
Bしかし、アンテナのエレメントと言うものは曲がっていても、あるいは対照なエレメント
同士が平行でなくてもそれなりに有効なことも報告されている。
例えば、参考文献2のXビームアンテナ(149ページ)、Vビーム(150ペ
ージ)、参考文献3のツイギー・ビーム(85ページ)、Σビーム(86ページ)、
リニアロード(86ページ)など多数あり。
そもそもキュビカル・クワッドもそうだしデルタ・ループや真円のループ自体もそうだ
とも言える。
Cローディングコイルを入れる方式は、コイルの設計や製作がめんどうだし、さらにもし
コイルを上方に入れるとなると風圧面積が増えて釣り竿が少しの風でもしなることにもな
り採用せず。
Dそこで結論として、不足する長さのエレメントを、目標としているアンテナがデルタ・
ループなので構造の面と調整作業のし易さ面で、逆三角形の下側でエレメントを遊ばせ
て補うことにした。
(3)どの程度の長さのエレメントを、どんな形で遊ばせればよいのか、それが問題だ。
@だれでもアンテナのエレメントやスタブの長さの調整には手をやく。
ましてや今回は基本的な長さや形がはっきりとしていず試行錯誤でやってみることは
無謀と言うもの。
Aここで出番がアンテナ解析プログラム MMPC だ(参考文献4)。
これで形と長さを決定しよう。
B図1を見てほしい。
図1は計画中のアンテの基本骨格である。
当然、釣り竿部分はエレメントを添わせることにする。
なおブームやサブブームはアルミパイプだ。
さてと、逆三角形の下側にエレメントをどう余らせるか?
C図2は上側ブームのサブブームに釣り竿を足してエレメントを横に突き出す案。
MMPCでやって見るとなかなか良い具合。
図は省略しているが、足した釣り竿にエレメントを沿わす方法もやって見たが、
ゲイン・FB比ともに劣る。
その他いろいろやって見たが、これと言った形がなかなか出てこない。
D図3はいろいろやっていてひらめいた形。図2に比べてSWRがよりフラットだ。
ゲイン・FB比はほぼ同じ。
図3に決めた。
Eなお試行錯誤していてわかったことの一つは、給電点は真下の中央がベストなこと。
他の場所は垂直成分の影響でパターンが乱れたりしてゲイン・FB比も良くない。
F他にもいろいろ分かった。
・全体が方形や○に近い形と☆みたいなでこぼこしている形の違い
・おりたたみ(リニアローディング)の場合はどうだ
など、是非皆さんも実験してみてほしい
6.製作の手順
(1)だいたいの形は決まったが、実際のサイズは、釣り竿などを組み立てて実際に作った上で
実測し、それを元にMMPCで計算して決定したい。
@手持ちのパーツをチェック
・クロスマウント 4個(マストと上ブーム、下ブームを固定 各1個
上ブームとサブブームを固定 各1個)
・アルミパイプ
28mm径 肉厚2.0mm 2.0m 1本 (上ブーム用)
25mm径 肉厚1.5mm 1.6m 2本 (上サブブーム用)
2.0m 1本 (下ブーム用)
・ステンUボルト 4本(L型アングルと上サブブームを固定)
・同軸ケーブル 5D2V(給電用 所用長 および 60cmほどの余り)
・M型接栓 オス 2個(同軸ケーブル両端)
メス 1個(給電点に使用)
・6mm銅パイプ 0.7m
(ガンママッチのC用−−−中に5D2Vの網線をはがして挿入してCを形成)
・ビニールテープ、自己融着テープ、布製ガムテープ、テレビアンテナ用ステー線、
など
A不足のパーツを購入。
・アルミのL型アングル 3cm×3cm×肉厚3mm×2m 2本
(近くのホームセンター 1本 2,000円でした)
・ホルマル銅線 1.2mm径 1000g
0.65mm径 400g(いずれもこんなに使わないが)
(日本橋 二三電機 フミデンキと読む
長尺ものを売ってる店なかなかありません。やっと見つけた)
・ステンのUボルトナット 5mm径× 50mm 2本
(アルミアングルで形成する扇の要の位置に使用)
・シリコーン系充てん材(セメダイン社製バスコーク)
B釣り竿をのばし継ぎ目をビニールテープと自己融着テープで固定。
CアルミL型アングルの端に穴をあけ、2本をステンのボルトとナットで止める。(写真1)
なお、エレメントを添わせている水平の釣り竿は架設後に設置。
写真1 アルミL型アングルと給電部分
DアルミL型アングルと釣り竿を、継ぎしろ(重ね合わせ)0.5mでガムテープと
ステー線でくくる。
全長5.72m2本と5.82m2本が出来た。
E1.2mm銅線を、釣り竿に沿わせテープ止め、アルミL型アングル部分は留めないで
遊ばせる。
あらかじめ銅線は少し余裕を持たせた長さで切り、片方を柱かなにかに結び、他方を
ペンチてつまんで引っ張って引き延ばしておく。これにより真っ直ぐになりなおかつ
少々の引っ張りではこれ以上伸びなくなる。0.65mmの銅線も同様。
F釣り竿先端側には0.65mm銅線を半田付けで継ぎ足し、反対側の先端とは4.6mの長
さ(間隔)とする。
(回転半径を広くとれるなら間隔はもっと長いほうがベター)
G上記要領でRa、Ref両方を工作し、骨格を組み立てる。
サブブームをアルミL型アングルの最先端より少し低めにUボルトとステー線で止める。
サブブームの高さは扇の要の位置のボルトから1.28mとなった。
Hそれより少し高いところ、つまり1.75mの位置で1.2mmの銅線を釣り竿に
テープで固定し、それより上側は釣り竿に沿わせ、下側は骨格に沿わせないで遊ばせてお
く。
Iエレメントの要所要所の長さを巻き尺できっちりと測定しメモっておく。
これはMMPCで計算し直すための非常に重要な入力データとなる。
(2)上記Iで採取した実寸データをMMPCに入力し、逆三角形下側の形を決定する
@ゲインとFB比の最高点は一致しない。どこに目標を置くかは個人の好み。
ARaとRefの間隔もパラメータの一つ。 回転範囲の制約もあるし1.6mに決定。
Bまだ上げてないので今なら製作や工事を最初からでもやり直せる、悔いなく試行錯誤する
こと。
コンピュータでアンテナの設計が出来るのは夢のようだ。以前の自作八木アンテナの時も
実感したが、コンピュータなしで、実物のアンテナでこれだけ試行錯誤しようとすると
何ヶ月もいや、何年もかかるだろう。試行錯誤の途中で折角できあがりつつあるアンテナの
工作部分が劣化してきたり、大事な屋根を壊したりしそう、考えただけでもぞっとする。
参考文献1にもその辺のことが涙ぐましく随所に書かれている。
アンテナ解析ソフトの開発者に感謝!
C図4が最終形。
D放射パターンは図5。
図5 2エレ デルタ・ループの放射パターン (給電点地上高7.3m)
E比較のために、2エレ八木(エレメント間隔は同じ1.6m)を計算すると、
主ビームの打ち上げ角度を同じ21度にするためには地上高が11.0m必要であった。
2エレ八木の放射パターンが図6。FB比もデルタ・ループが優れている。
図6 2エレ 八木の放射パターン (給電点地上高11.0m)
(3)形が決まったら実際に空中に架設する。
@タワーのマストに上下のブームを取り付ける。
ARaとRefをタワー上にロープを使って持ち上げて、上下のブームに取り付ける。
RaとRef共に軽量(各5Kgぐらい)で楽々作業できる。
B下側で遊んでいるエレメントを設計値通りになるように張る。
そのために一番下の水平横部分は釣り竿の廃材のファイバーを利用しアルミL型アングル
に針金でしばり、エレメントをビニールテープで仮止め。
Cマッチングはガンママッチを採用。
Cは銅パイプの中に5D2Vの心線(網線をはがしたもの)を差し込むことで形成。
銅パイプの長さは70cmくらい、調整後長すぎる場合は切断する。
今回は55cmで切断した。
(4)同軸をつなぎエレメント長とSWRを調整する。
@エレメント長の調整は、一番下側の銅線のなるべく中央に1ターンループを作り、
ディップメーターで測定しながら行う。左右とも同じ長さに切る。設計値より20cm
ほどのカットでOKであった。
ASWRメータはシャックの送信機に入れて、メータは外付けを自作し、マッチング部分まで
線で延長して、調整しながら手元で見えるようにしている。
もちろん送信操作もリモートで行っている。
BSWRは1.2まで落ちた。これぐらいで十分。
なお、SWRを落とすのにエレメント長を調整してはダメ。ゲインやパターンが目的通り
にならなくなる。
(5)最終作業として、M型接栓メスや銅パイプの防水はシリコーン系充てん材を厚く塗り、
テープなどでの仮止めは本止めにする。
(6)写真2と3が完成時の写真。
写真2 完成写真
写真3 完成写真(反対側から)
7.使用実感、反省点など
(1)さて、一番気になる性能だが、まずFB比やサイドのキレはMMPCで計算されたのと
同じ感じ。S9がバックで7ぐらい、S3ぐらいの弱い局はかすかしか聞こえなくなる。
ゲインはこればっかしは分からない。
(2)暦日にして2週間程の間の運用で北米を除いて出来た。
OZ、LU、FR(Reunion)、T32、XW、CE、ZK1(North)、
3D2。
さすがにパイルでは勝てませんが、それなりに飛んでるようです。
耳のほうも他局並みの印象ですが特別弱い局はさすがに入感しません。
(3)風に対する性能ですが、釣り竿だから少しの風でもゆらいでいる。
家がかすかに揺れる程の風が1〜2時間吹いた夜があり心配しました。
翌朝見たら庭の植木鉢が倒れていたが、大丈夫だった。
(4)最上部のエレメントの太さが0.65mmで、これが一番気がかり。
(5)春一番や台風が予想される時は降ろすつもり。
(6)現在28や21MHzが最高だが出られないのは本当に悔しい。なんとかならないか!
8.今後の計画
(1)最上部エレメントを0.8〜9ぐらいの線に交換。
(2)21にも出られるように、デルタループのマルチバンド化に挑戦したい。
参考文献
1 『キュビカル・クワッド』JA1AEA 鈴木 肇 CQ出版社 昭和58年10月15日 第12版
2 『アンテナハンドブック』CQ出版社 昭和56年10月31日 第28版
3 『コンパクト・アンテナブック』CQ出版社 1991年 5月10日 第3版
4 『MMPC』 JA1WXB
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