TVIやAMPIはいやですね。
今までに経験した幾つかの実例です。参考になれば幸いです。
共通事項(注意点)
・対策は小出しに実施しない。全部の対策を一度に実施するくらいのつもりで始める。
(原因は一つとは限らないので小出しに対策しても効果がはっきりしない場合があるから)
・現象から原因を推定することはある程度可能です。原因を推定して最適な対策が抜けない
ようにし能率良く作業することは非常に重要で、相手の方からの信頼度も向上すると思い
ます。
TV 特定のCH−−−TXの高調波の可能性高し
どのCHも−−−基本波の可能性高し
ステレオ(オーディオI)−−−基本波の可能性高し
電話機−−−−基本波の可能性高し
ビデオの電源が入る−−−−基本波の可能性高し
高調波の場合、送信アンテナを回転させても症状は(殆ど)変わらない。
基本波の場合、 〃 ると症状が変わる(変わりやすい)。
・相手のお宅へ訪問するときなど、服装、言葉使いなど紳士的に丁寧に対応すること。
なにしろ原因は何であれ現に障害を受けておられるのだから。
TV、ステレオなどの対策に使う部品はなるべく新品を使う、訪問するとき最初は
手みやげを持参するなどすると印象が良くなるのでは。
例1 TVI
送信機パワー HF100W
TV受信機 S社 14インチ
症状 どのバンド(14、21メガ)、どのCHでも画面が大いに乱れる。
対策 @TVアンテナの同軸ケーブルに別のTVへ向かう分波器が入っている。
分波器を通さず直結するとTVIが出ない。
別の分波器に交換するとOK。元の分波器でも同軸を強く留めるとOK。
A別の分波器に交換
結果 症状出ない
考察 元の分波器の同軸の外皮を留める形式がペンチでつまむ形。
ここが接触不良でダイオードが形成され基本波の誘起電流が整流され高調波が
発生していた模様。接触不良に要注意。
(TV画面を見たぐらいでは接触不良を発見できない。また、テレビ電波の強度
ではダイオード効果が出るまで誘起電圧が高くなく映像などに影響がでない)
留意 @別の形式はネジで締め付ける形式で、DIY店でも値段がほんの少し高いが、
ネジで締め付ける形式を使おう。
Aつまむ形式は分波器製造の原価低減、工事時間の短縮には効果有るが
副作用が大きすぎので、分波器メーカには再考を願いたい。
B送信側の近くに放置しておいた古いアンテナのアルミパイプに送信電波が乗り
接触しているアルミパイプを離したら出なくなったと言うことを何かの資料で
読んだこともある。
送信アンテナのラジアルが金属物体と接触していても問題を起こすと思います
(この場合はSWR計が不安定で分かるかも知れないが)。
このBのケースは私自身は未経験。
例2 TVI
送信機パワー HF100W
TV受信機 N社 15インチ
ビデオ P社
症状 どのバンド(21、28メガ)、どのCHでも画面が乱れる。
対策 @TXのアンテナにローパス・フィルター+コモンモード・フィルター
Aリグの電源にコモン・ノーマル両用フィルター
TX・RXはもちろんエレキーなどフィルター経由で電源を供給
B感電防止アースにRFCコイル
Cビデオのアンテナ端子(F型コネクター)にテレビ受信用コモンモード・フィルター
結果 症状出ない
推察 基本波がビデオ(およびテレビ)に入りTVチューナが飽和。
一番効果が大きいのは対策C
例3 TVI
送信機パワー HF1KW
TV受信機 S社 25インチ、他 送信タワーとは40m離れている
症状 どのバンド(14、21、28メガ)、どのCHでも画面が大いに乱れる。
アンテナのビームを向けると症状がひどくなる。
対策 上記症状から基本波原因と判断し
@テレビのアンテナ端子(F型コネクター)にテレビ受信用コモンモード・フィルター
結果 14メガ・2chでしま模様が出る
推察 14メガの第7高調波が原因と判断し、
A送信機側にTノッチ・フィルターを挿入。
結果 問題なし。
推察 基本波と高調波の複合原因。
例4 AMPI
送信機パワー HF100W
ステレオ O社 コンパクトコンポーネントステレオデッキ
(AMP部、チューナー部などが別筐体)
症状 SPから音声が出る
対策 MDデッキとの結線など入力系の配線を全部抜いても症状は変わらない、
よって、SP配線からと推定し、
@SPの配線をバーコードのコアに巻けるだけ巻く。
まだかすかに入っており、
AチューナとAMPの筐体同士を太い網線(同軸ケーブルの外皮をはがした手製)で
一番効果のあるねじを探し当ててネジ止め。
結果 問題なし。
例5 VTRの電源が入る
送信機パワー HF100W
VTR P社
症状 電源が自動的に入る(間欠的現象)
対策 @VTRのアンテナ端子(F型コネクター)にテレビ受信用コモンモード・フィルター
を挿入。
結果 問題なし。
解説
ノーマルモード高周波電流(別名 差動型高周波電流)
電源コード、同軸ケーブルなど2本ある導線に、通常の信号のように反対方向に交互に
流れる電流。
コモンモード高周波電流(別名 同相型高周波電流)
電源コード、同軸ケーブルなど2本ある導線に、同じ方向に交互に流れる電流。
ノーマルモード高周波電流を低減する対策
TXのアンテナ側
ここには本来的にノーマルモード高周波電流が流れる箇所であり対策はとれない。
目的周波数以外の高周波はローパス・フィルターやハイパス・フィルター、バンド
パス・フィルターを入れることにより低減できる。
また、高調波に同調させたTノッチも有効。
TV・ビデオのアンテナ側
144メガや430メガなどの基本が受信部に飛び込むことが原因の場合は
それぞれの基本波に同調させたTノッチが有効。
コモンモード高周波電流を低減する対策
★以下の各タイプのフィルタ製作で共通の注意事項は、
・コアにn回巻くとはn回通す意味
・巻き初めと巻き終わりの線はなるべく接近しないこと
(巻きつける範囲の理想はコアの半分。つまり、密着巻きでも最大半分で、
回数が少なければ粗く巻く)
リグのアンテナ側(つまり同軸ケーブル)
TX(SWRメータをつないでいる場合はSWRメータ)のアンテナ端子
に写真1を入れる。
|
|
|
|
写真1 |
写真2(参考文献2.の253ページから転載) |
トロイダル・コア(μs=100程度。例えばアミドン社のFT-114-61)に同軸ケーブル
RG188A/Uを8回巻き。
このフィルターはHFの場合に有効。作り方は写真2。
1.8メガバンドなど低い周波数においてはリアクタンスを大きくするために
μs=1,000程度、例えばアミドン社のFT-114-43を使用する必要がある。
リグのAC電源側
TXと高周波的につながっている全ての機器へこのAC電源コモン・ノーマル
両用フィルター写真3(準備中)から電源供給する。
なおこのフィルターはノーマルモードに対しても有効。
トロイダル・コア(μs=100程度。例えばアミドン社のFT-114-61)に太いエナ
メル線などを12〜15回巻き。
0.1μFと0.01μF(耐圧250V以上)のセラミックコンデンサーを入れる。
巻く方向などは写真3参照。
商用電源が流れるので電流容量に余裕のある太さの線を使い、絶縁とショート
にも十分注意のこと。
(私の場合、留守の時は電源を切れるようにフィルターより配電盤側にスイッチ
を入れて普段は切ってある)
(写真は準備中)
1.8メガバンドなど低い周波数においてはリアクタンスを大きくするために
μs=1,000程度、例えばアミドン社のFT-114-43を使用する必要がある。
リグのアースなどで高周波遮断
保安用アースにはRFC写真4を入れる。
直流やオーディオ信号から高周波を遮断する目的にも使える。
|
|
|
写真4 |
トロイダル・コア(μs=100程度。例えばアミドン社のFT-114-61、
やTDK社K6A。写真はTDK社K6A)にエナメル線など(細
くて良い)を12回巻き。
オーディオのシールド線などは被覆をむかずにそのまま、平行線もそのまま巻く。
1.8メガバンドなど低い周波数においてはリアクタンスを大きくするために
μs=1,000程度、例えばアミドン社のFT-114-43を使用する必要がある。
TV・ビデオのアンテナ側
アンテナ端子にテレビ受信用コモンモード・フィルター写真5を入れる。
|
|
|
写真5 |
トロイダル・コア(μs=1000程度。例えばアミドン社の
FT-114-43)に同軸ケーブル1.5C-2Vを11回巻き。
これはテレビのV/U両方のCHで使用出来る。
ケーブル両端にはF型接栓オスとメスを接続しておくとTV
などへの接続が楽。
このフィルターはHFの場合に有効。
リグを置く机(台)は木製にする。
金属製の机の上にリグを並べると、リグと机の間の静電容量を経由してアンテナ系の
同軸、リグ、接地系のアース線などが結合して、せっかく入れたコモンモード系の
フィルターの効果が半減してしまう。
参考
1.使用目的毎のトロイダル・コアには望ましいμs(比透磁率)がある。
結論は上記の製作例とおりであり、理論的説明は参考文献1.を参照。
2.TVI、AMPIの対策の実例は参考文献2.に詳しい。
3.トロイダル・コアの例を写真7に示す。
|
|
|
写真7 |
左が、アミドン社 FT−114−43
(直径が1.14インチ μs=850)
右が、TDK社 K6A
(直径31mm μs=70)
4.市販品の電源フィルターは使えるか?
|
|
|
写真8 |
秋葉原、日本橋などで「トロイダル・コアに巻いた10A、1mH
のコイル」写真8が売られている。
これのμsはどれくらいか?
これはAC電源のコモン・ノーマル両用フィルターに果たして使えるか?
これを検討してみよう。
1mHは1*(10**6)nH。
このコイルの巻き数を数えると片側で16回。
(トロイダルの巻き数は穴をくぐっている回数。穴に線を通しただけ
でも1回と数える)
トロイダル・コアのインダクタンスの計算式は、
L=AL(N**2) [nH]
L:インダクタンス N:巻き数
AL:コアのサイズと材質で決まる常数
これを変形して、
AL=L/(N**2)
=(1*(10**6))/(16**2)
=(1/256)*(10**6)
=0.003906*(10**6)
=3906
アミドン社の規格表を見るとALが3900程度のトロイダル・コアは#75材が
近く、#75材のμsは5000。
AC電源コモン・ノーマル両用フィルター用のμsは100程度が望ましく、
この市販コイルはこの目的のフィルターには不適切と推定出来る。
ACラインフィルターを自作する場合の最大の難関は絶縁性の確保と思う。
この市販コイルはもとからAC電源用に作られているので絶縁性も良く価格も手ごろで
あり非常に残念です。ですから使ってみて効果があれば活用すべきですね。
参考文献
1.『トロイダル・コア活用百科』 山村英穂 著 CQ出版社 1991年2月20日発行 第11版
2.『CQ誌』1989年1月号 249〜260ページ JA2NYK鈴木寛昭著 CQ出版社発行
3.『FTシリーズ規格表』 アミドン社発行